前WBA世界ヘビー級王者チャガエフ引退!
ヘビー級では185cm(実際は180cmらしい)と小兵だった前WBA世界ヘビー級正規王者のルスラン・チャガエフ(37=ウズベキスタン)が左目網膜剥離の悪化により引退することになったと7月31日(日本時間8月1日)に関係者によって発表された。
また、2001年に左目を手術していたことも判明。
チャガエフの全盛期は小柄ながらも不利を覆しての豪快な倒しっぷりで日本でも人気のあった選手でした。
チャガエフは母国ウズベキスタンのアマチュアで活躍したあと、プロを目指して米国へと渡った。
1997年8月21日、米国イリノイ州オーロラのハリウッド・カジノでドニー・ペネルトン(米国)と4回戦で闘い、わずか初回2分30秒のKO勝ちで華々しいデビュー戦を飾る。
しかし、米国で6試合(5勝4KO1分)を闘ったあとにドイツへと主戦場を移すことになった。
また、この頃チャガエフはプロとアマチュアを行ったり来たりしていたことから問題視されてもいました。
記録上で同じ年代にプロとアマの戦歴記録が重複しているのはそのためです。
その後、チャガエフは連戦連勝して2006年11月18日、ドイツ・デュッセルドルフであのスーパースターのイベンダー・ホリフィールド(米国)に判定勝ちしてWBA世界ヘビー級王座に就いたことのあるジョン・ルイス(米国)とWBAヘビー級王座挑戦者決定戦で激闘の末に2ー1の判定勝ちを収めて挑戦権を手にする。
そして、2007年4月14日、ドイツ・ロストックで23戦22勝(17KO)1分無敗の戦績を引っ提げ、身長213cmで体重140kgの大巨人として人気を誇ったロシアンスターのWBA世界ヘビー級王者ニコライ・ワルーエフの4度目防衛戦の対戦相手として世界初挑戦となった。
対峙すると身長で30cm以上、体重で30kg以上の差は大人と子供ほどの違いだった。
試合は前半にワルーエフの左ジャブが流れを動かし、中盤からチャガエフの右ジャブ、左ストレートが制した。
結果はチャガエフが2ー0判定で勝利してワルーエフに初黒星を与え、47連勝と4度目の防衛を阻止して大番狂わせを起こして世界初挑戦での王座獲得となった。
当時、ワルーエフが圧倒的有利とされたが、この勝利でチャガエフの名は一気に世界へ知れ渡ることとなった。
チャガエフは順調に防衛を重ねて行くかと思われたが、B型肝炎と診断されたり、アキレス腱断裂などの怪我もあって試合が中止になり休養王者扱いになったこともあった。
しかし、それを克服して2度の防衛に成功した。
その後、WBA団体から指名戦指令が出されたが、大一番が舞い込んだ為にこれを優先する。
2009年6月20日、ドイツ・ゲルゼンキルヘンで当時IBF・WBO世界ヘビー級の絶対王者だったウラジミール・クリチコ(ウクライナ)に保持するWBA王座は懸けずに挑戦すると2回にダウンを喫してペースが掴めないうえに左目上をカットして流血。9回終了で棄権を申し出てTKO負けとなり初黒星を喫して王座獲得に失敗となった。
そして、指名戦を後回しにしたことで保持していたWBA王座は剥奪されるという憂き目に遭ってしまう。
2011年8月27日、ドイツ・エアフルトでアテネ五輪(2004年)のSヘビー級金メダリストで21戦全勝(15KO)の売出し中だったアレクサンデル・ポベトキン(ロシア)とWBA世界ヘビー級王座決定戦で戦うと中盤まで互角だったが、徐々に小刻みな有効打を打ち込まれて12回三者共に4ポイント差の判定負けに終わり、王座返り咲きはならなかった。
その後、再起して5戦全勝(3KO)で王座戦線に復活すると再びチャンスが訪れた。
2014年7月6日、ロシア・グロズヌイでフレス・オケンド(プエルトリコ)とWBA世界ヘビー級王座決定戦で戦い終始互角の打ち合いだったが、終盤有効打で上回り僅差ながらも、12回2ー0判定勝ちを収めて5年振りとなる王座返り咲きに成功した。
2015年7月11日、ドイツ・マクデブルクで初防衛戦をサウスポー同士対決に臨みフランチェスコ・ピアネッタ(イタリア)と対戦すると初回2度ダウンを奪ってこの回2分57秒のKOであっさり退け初防衛に成功した。
今年3月5日、ロシア・グロズヌイで2度目の防衛戦を196cmと大柄で23戦全勝(20KO)を誇る指名挑戦者ルーカス・ブラウン(豪州)と対戦することとなった。
試合は立ち上がりからチャガエフが優位に進めていくと6回チャガエフの強烈な左フックでブラウンがダウン。
立ち上がったブラウンは再びチャガエフに左右連打でKO負け寸前に陥ったが、大柄なブラウンはクリンチや覆いかぶさるなどして持ちこたえる。
ブラウンは徐々にダメージを回復していく。
そして、迎えた10回中盤右フックの相打ちでブラウンのフックがチャガエフの顎をとらえると崩れ落ちた。チャガエフは立ち上がったが、ブラウンが左右連打を浴びせるとレフェリーがたまらず割って入り試合を止めた。
ブラウンの10回2分2秒での見事な逆転TKO勝ちだった。
翌日のスポーツ紙やボクシングネットで「豪州人初の世界ヘビー級王者誕生!」の見出しが駆け巡った。
しかし、1週間後にとんでもないことに発展していく。
試合が終わっての1週間後3月22日、VADA(ボランティア・アンチ・ドーピング協会)による薬物検査でブラウンの尿から禁止薬物が検出されたと発表。
5月12日、予備検体でも同じ禁止薬物が検出されたため、WBAはブラウンの王座を剥奪して6ヶ月の試合出場停止処分を科した。
5月21日、WBAは3月5日の試合を無効試合として王座をチャガエフに差し戻す決定がなされて6月8日にチャガエフを王者として復活させた。
7月26日、WBAは再び王者となったチャガエフに対して以前対戦した現在4位のフレス・オケンド(プエルトリコ)との対戦指令を出したが、戦う意思を示さなかったため、2ヶ月足らずで王座剥奪となった。
チャガエフのプロモーターはメディアに対して「チャガエフはもう戦う意欲はないと話しています。それは間違いありません。理由は彼の左目の状態が良くないからです」と語っている。
結局、チャガエフは3月5日のルーカス・ブラウン戦(上の写真)が最後の試合となった。
けっして派手なパフォーマンスをするでもなく、地味だったが試合となると迫力あるスリリングな戦いをみせてくれた選手だった。
日本の昔風にいうと「小よく大を制す」の言葉に相応しい選手でした。
〈ルスラン・チャガエフMEMO〉
本名:ルスラン・シャミロビッチ・チャガエフ
生年月日:1978年10月19日(37歳)
ニックネーム:「white tyson」体格、風貌がM・タイソンに似ていたことから。
出身地:ウズベキスタン・アンディジャン州アンディジャン
階級:ヘビー級
スタンス:左・ボクサーファイター
身長/リーチ:185cm/188cm ※去年のBOXRECでは180cmだったが、いつの間にか身長が伸びたんですね(笑)
【プロ生涯戦績】
38戦34勝(21KO)2敗1分1無効試合
【プロ獲得タイトル】
第33代WBA世界ヘビー級王座(防衛①)
休養王者時(防衛①〜剥奪)
第37代WBA世界ヘビー級王座(防衛①)
第37代2期目(防衛⓪〜剥奪)
【アマチュア戦績】
85戦82勝3敗
【アマチュア戦歴】
ー世界ジュニア・ボクシング選手権ー
●1996年 ハバナ(キューバ)ヘビー級・銅メダル
ー世界ボクシング選手権ー
●1997年 ブダペスト(ハンガリー)ヘビー級・金メダル(後に没収)
この試合では前人未到の5連覇中で五輪でも2連覇中だったキューバの英雄フェリックス・サボンに(14ー4)で勝利して優勝したが、その後プロデビューしていたことが発覚してメダルを没収され、サボンが繰り上げ優勝となって6連覇達成となった。
この後もチャガエフはプロ〜アマ〜プロと行ったり来たりしていたのは有名で何故許可されたのかは不明。
ある時は国のために、ある時は生活のためにという具合でした。
●1999年 ヒューストン(米国)ヘビー級・キューバの英雄フェリックス・サボンに(1ー9)で敗れ3回戦敗退。
●2001年 ベルファスト(北アイルランド)Sヘビー級・金メダル
ーアジア競技大会ー
●1998年 バンコク(タイ)ヘビー級・金メダル
ーアジアボクシング選手権ー
●1995年 タシュケント(ウズベキスタン)ヘビー級・金メダル
●1999年 タシュケント(ウズベキスタン)ヘビー級・金メダル
ーオリンピックー
●1996年 アトランタ五輪・ヘビー級(初戦敗退)
●2000年 シドニー五輪・ヘビー級(2回戦敗退)
チャガエフはオリンピックでのメダルには縁がなかったようです。
チャガエフよ本当に素晴らしいファイトをありがとう・・・
《前WBA世界ヘビー級正規王者ルスラン・チャガエフ引退!》特別編/No.653
《WBC世界ミニマム級タイトルマッチ》8月2日 タイ国/No.654
《WBC世界ミニマム級タイトルマッチ》
開催日:8月2日
開催地/会場:タイ国チョンブリ県/シティホール・グランド
WBC世界ミニマム級王者
ワンヘン・ミナヨーティン(30=O/THA)
VS.
WBC世界同級1位
サウル・フアレス(25=O/MEX)
〈試合経過〉
フアレスが序盤から左ジャブを突いて接近すると左右ボディ、離れてワンツー、右ストレートと順調なスタートを切った。ワンヘンは左ジャブを多用しての様子見だった。
2回、ワンヘンが左ジャブから右ストレート、左フックと攻めて終盤右ストレートでフアレスを仰け反らして流れを掴む。
3回、フアレスが左ジャブから左フック、ワンツー、接近して左ボディ、左フックと出入りの激しい攻めで巻き返す展開。
4回、ワンヘンが左ジャブを多用して右ストレートを連発。フアレスも負けじと接近して右フック、右ボディ、左ボディと攻めたところでローブローの注意を受けた。
〈公開採点〉
38ー38×2(イーブン)
39ー38(ワンヘン)
1ー0でわずかにワンヘンがリード。
5回からワンヘンが接近して左ボディ、左右ボディ、左フック、離れてワンツーと手数を増やして流れを掴んだ。
6回〜7回とワンヘンがワンツー、右ストレートを連発してフアレスを仰け反らす。
8回にもワンヘンが左ジャブを多用してプレッシャーをかけるとここでも右ストレートがヒットして主導権を握った。
〈公開採点〉
77ー75(ワンヘン)
78ー74(ワンヘン)
78ー75(ワンヘン)
3ー0でワンヘンが手数と有効打で明確にリードした。
9回、ポイントで差をつけられたフアレスが左ジャブから接近して右フック、離れてワンツーと攻めるものの、パンチが浅く巻き返すまでにはいかない。
10回、ワンヘンが接近して左ボディ、右フック、離れて右ストレート、ワンツーとフアレスの攻めを封じる展開。
11回〜12回とフアレスが挽回を狙ってボディ、アッパー、離れて右ストレート、ワンツーと激しく攻めたが、ワンヘンにダメージを与えるまでにはいかない。
勝利を確信したのかワンヘンは右ストレートを多用しながらディフェンスに終始するなかでゴングとなった。
〈採点結果〉
115ー113(ワンヘン)
116ー112(ワンヘン)
116ー113(ワンヘン)
3ー0の判定勝ちでワンヘンが5度目の防衛に成功して無敗をキープした。
フアレスは世界初挑戦のチャンスも王座獲得ならず。
尚、この試合の主審を務めたのはレフェリングに定評のある日本の福地 勇治(JBC)レフェリーでした。(写真下)
【両選手の戦績】
★ワンヘン・ミナヨーティン 43戦43勝(17KO)無敗
★サウル・フアレス 29戦23勝(12KO)5敗1分
〈後記〉
ワンヘンの打撃テクニックと試合運びの巧さが上回った。
フアレスは前半戦と終盤戦にいい攻めを見せたが、5回から10回までの攻めに手数はあったものの、空振りも多く的確性に欠いてポイントで差をつけられたのが敗因だった。
ワンヘンは43戦すべてを地元で戦い海外での試合は一度もない。
その強さを証明するのであれば、海外での試合も必要でしょう。
過去の日本人選手との対戦は2013年8月30日、WBCインターナショナル・ミニマム級王者時代に岩橋 裕馬(森岡)と対戦して3ー0の大差判定勝ちで退け5度目防衛に成功。2016年3月3日には保持するWBC世界ミニマム級王座の4度目防衛戦で大平 剛(花形)の挑戦を受け5回TKO勝ちで退けている。
ワンヘンの来日に期待したいが、果たして・・・
《井上尚弥3度目防衛戦&清水聡デビュー戦》9月4日神奈川県座間市/No.655
《WBO世界Sフライ級タイトルマッチ》
メダリスト清水聡デビュー戦
《58kg契約6回戦》
開催日:9月4日
開催地/会場:神奈川県座間市/スカイアリーナ座間
《WBO世界Sフライ級タイトルマッチ》
WBO世界Sフライ級王者
井上 尚弥(24=O/OHASHI/JPN)
VS.
WBO世界同級2位
P・ゴーキャットジム(31=O/THA)
井上の3度目防衛戦は出身地の神奈川県座間市での凱旋試合となる。
かねてから対戦話が囁かれてきたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)がフライ級からSフライ級へと上げてきたことで一層現実味が湧いてきた。
いよいよ両陣営も「夢の対決」へ向けて交渉準備に入るようです。
しかし、軽量級最強のゴンサレスとの対戦を実現させるには開催地やファイトマネーなどの問題を詰めなければならず、即決定とはならないでしょう。
それでも井上陣営は来年中には実現させたいという。
もし、決定となれば日本は元より世界中のファンから注目を集めるでしょう。
あと2試合後になるのか、3試合後になるのか待つしかないが、楽しみです。
そして、今回の試合で「怪物」の名に相応しい強さを示す勝ち方が問われるでしょう。
何れにしても「夢の対決」へ向けて負けられない一戦となる。期待したい。
〈ペッチバンボーン・ゴーキャットジム〉
ペッチバンボーンは過去5度来日して日本人選手との対戦は5戦1勝(1KO)4敗と噛ませ犬的存在だった。
しかし、最後の2013年9月1日、大阪・ボディメーカーコロシアムで現日本Sフライ級王者の石田 匠(井岡)と8回戦で対戦して2回KO負けして以来16連勝(9KO)の快進撃で波に乗っている。
また、直近では今年4月11日、地元タイで4年前に横浜アリーナで当時のWBA世界バンタム級王者亀田興毅(亀田)に世界挑戦経験(判定負け)を持つノルディ・マナカネ(インドネシア)に大差判定勝ちしている。
ペッチバンボーンにとっては過去日本で敗北した借りを返す絶好のチャンスとなる。
戦い振りは自分の距離を保ち相手の出方をうかがい、隙あらば打ち合うというボクシングでボクサーファイタータイプの選手。
待ちの部分が多い戦い方でスピード感はない。
インファイトを好み得意の右フックからボディ打ちと上下に打ち分け、離れるとワンツー、右ストレートを放つ。
出入りの激しいアウトボクサーは苦手なようです。
7敗のうちKO負けは1度しかなくタフで粘り強い選手と言えます。
〈予想〉
ペッチバンボーンは井上の前試合対戦者デビッド・カルモナ(メキシコ)と比較すればさほど怖さはない。
ただ、井上が注意すべきはところはペッチバンボーンが体を左右に振りながらフック、ボディとひつこく攻め込んだあとの離れ際に右フックを振り回してくるところでしょう。
ペッチバンボーンのKO勝ちのパターンはこの右を切っ掛けに畳み掛けていることが多い。
井上にとっては油断大敵といったところ。
キャリア47戦目と今まで戦ってきたなかで一番の戦歴を持つベテラン挑戦者をどうかたずけるのかに注目です。
まあ、井上が普段通りの攻めをすれば中盤あたりでのKO勝ちでしょう。
【両選手の戦績】
★井上 尚弥 10戦10勝(8KO)無敗
★P・ゴーキャットジム 46戦38勝(18KO)7敗1分
《58kg契約6回戦》
ロンドン五輪バンタム級・銅メダリスト
清水 聡(30=S/OHASHI/JPN)
VS.
韓国フェザー級王者
李 寅圭(Lee Inkyu/24=O/KOR)
いよいよロンドン五輪バンタム級銅メダリストの清水がプロデビューする。
7月5日にプロ転向を表明しての異例の早さだった。
7月29日にプロテスト(B級)に受かって6回戦でのスタートとなる。
所属先のジム会長は「2年以内に世界王者にしたい。強い左ストレートは魅力です。清水ならプロの水にもすぐに慣れるはず」と語った。
清水のプロでの階級はフェザー級に決まった。
ちょっとプロ転向の決断が遅過ぎた気もするが、果たして陣営のいう2年で頂点へ辿りつけるのかどうか。
清水の体格は身長179cm(リーチ181cm)とフェザー級ではかなりの大柄。
サウスポーで左ストレートには強打を秘め、ディフェンステクニックも素晴らしい。
これから先、テクニック重視で戦うのか、それとも強打を売りに倒す戦いをするのかにも注目したい。
デビュー戦相手の李寅圭(リ・インギュ)は2014年9月28日、韓国・京畿道驪(り)州市で韓国フェザー級王座決定戦が行われユン・ムンサンに3ー0判定勝ちして王座に就いた。
しかし、折角、王座を獲得したものの、これ以降は試合をしていない。
つまり、2年振りの試合が日本でということになる。
情報によれば、2年も試合をしなかったことで新王者が誕生したという。
従って、李は前王者ということになるでしょう。
しかも、5戦3勝(1KO)2敗の戦績で王者だったとは驚いた。
普通なら韓国王者ともなれば映像があるはずだが、ひとつもない。
ということで、どういうタイプの選手なのか皆目分からない。
分かっているのは身長172cmでオーソドックスの選手ということぐらいです。
まあ、戦績を見ると清水が勝って当然のレベルでしょう。
また、どういう勝ち方をするのか問われるデビュー戦でもあります。
期待したい。
最後に、韓国と言えば、かつては名選手がいっぱいいて日本とのライバル意識が強かった。
しかし、1980年代初頭にIBF団体の韓国での王座乱造・選手替え玉事件・リング禍と立て続けに不祥事や事故が続いてファンが遠退き敬遠されると興行が成り立たなくなって低迷が続いている。
最近少しは盛り上がりつつあるらしいが、果たして韓国のボクシング人気は復活となるのか・・・
《アンドレ・ウォード世界前哨戦》8月6日(日本時間7日)米国/No.656
ーアンドレ・ウォード世界前哨戦ー
《WBOインターC・Lヘビー級王座決定戦》
開催日:8月6日(日本時間7日)
開催地/会場:米国カリフォルニア州オークランド/オラクル・アリーナ
IBF世界Lヘビー級1位・WBO2位
元WBAスーパー・WBC世界Sミドル級王者
アンドレ・ウォード(32=O/USA)
VS.
WBA世界Lヘビー級10位・WBO13位
アレクサンデル・ブランド(39=O/COL)
試合はリオ五輪が開幕したなかで行われた。
ウォードは来る11月19日、米国ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで3団体Lヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(ロシア)への挑戦がすでに決定していて2階級制覇を目指すためにも負けられない試合となる。
その王者コバレフがリングサイドで見守るなかでコングは打ち鳴らされた。
〈試合経過〉
初回ウォードが左ジャブを多用してボディジャブを繰り出し様子見のスタートを切った。ブランドは左ジャブからワンツーで仕掛けた。
2回、ウォードが接近すると右ボディ、左フック、左ボディと圧力をかけ始める。ブランドはワンツーで応戦。
3回〜4回もウォードはボディに集中して離れると右ストレート、ワンツーと完全に主導権を握った。ブランドも右ストレート、ワンツーで応戦するものの、手数が減っていく。
5回、ウォードが右ストレート、ワンツーボディ、右ボディと攻め終盤左構えにスイッチして左ストレートをヒット。ブランドはまったく手が出ない。
6回、ウォードが左ストレート、接近して左フック、左ボディ、左ストレートと一方的攻め。
7回、ウォードが右構えに戻すと左ジャブからワンツーで攻め、終盤再び左にスイッチして左ストレートをヒット。ブランドは左ジャブを突いて応戦も手が出ず右瞼をカットして精彩がない。
8回〜9回もウォードが右構えに戻して右ストレート、ワンツーをヒット。ブランドは右ストレート、ワンツーで攻めるものの、まともにヒットせず途中左フックを空振りしてスリップダウン。
10回、ウォードがワンツー、右ストレートをヒットさせると、終盤再び左構えにスイッチして左ストレートをヒット。ブランドは左右を空振りして明らかなスタミナ切れで打たれるとクリンチを仕掛けた。
11回〜12回とウォードが右ストレート、ワンツーと攻めて余裕で回を重ねた。ブランドもラストに最後の力を振り絞って左右ボディ、左フックと抵抗するなかでコングとなった。
初回のみ互角だったが、これ以降ウォードがすべて支配した格好だった。
ウォードが世界前哨戦に余裕の完勝!
〈採点結果〉
ジャッジ三者ともに120ー108のフルマーク判定勝ちでウォードがWBOインターコンチネンタル・Lヘビー級王座を獲得した。
ブランドは勝利しての世界ランキング上位を目指したが敗れ去った。
【両選手の戦績】
★アンドレ・ウォード 30戦30勝(15KO)無敗
★アレクサンデル・ブランド 27戦25勝(19KO)2敗
〈後記〉
ウォードが大差判定で勝利したものの、見せ場の少ない試合だった。
それでもまともに打たせないテクニックは素晴らしかった。
KO率の高いブランドは自慢の左右を振り回したが、数発ヒットしただけでウォードに躱されてしまった。
強いてウォードの見せ場を言えば、5回〜6回左にスイッチしての左ストレート、後半戦の右ストレートだった。
その見せ場の少ない結果にウォードの地元ながらも、目の肥えたファンに途中と試合終了時にブーイングを浴びてしまった。
ひとつ言えることは、王者が観戦するなかでウォードはあえて手の内を見せなかったともとれた。
そんな中、リングサイドに陣取る王者のコバレフが大画面に映し出されるとウォーっと大歓声があがった。
豪腕コバレフへの挑戦はウォード自身もテクニックだけでは勝てないことを百も承知しているだろう。
今年3月26日、同じ会場でIBF世界Lヘビー級1位のサリバン・バレラ(キューバ)と対戦して大差判定勝ちで挑戦権を獲得したあとのインタビューでは「王者のパンチでは僕を倒せるはずがない。何故ならもう攻略は体にインプットしているし、逆に倒す攻略もインプットしている」と豪語していた。
さあ、いよいよ11月にコバレフのパワーとテクニックのウォードが激突です。
《クアドラスVS.ゴンサレスの無敗対決!》9月10日(日本時間11日)米国/No.657
《WBC世界Sフライ級タイトルマッチ》
開催日:9月10日(日本時間11日)
開催地/会場:米国カリフォルニア州イングルウッド/ザ・フォーラム
WBC世界Sフライ級王者
カルロス・クアドラス(28=O/MEX)
VS.
WBC世界フライ級王者・3階級制覇王者
ローマン・ゴンサレス(29=O/NCA)
無敗同士の最強対決!
クアドラスは日本の帝拳ジムとマッチメイク契約し、ゴンサレスは所属選手となっていることから、言わば同門対決となる。
また、両選手は共に日本のリングに登場して久しい。
クアドラスは5戦目となる試合で初来日して2008年10月16日に東京・代々木体育館で長谷川 穂積(真正)VS.アレハンドロ・バルガス(メキシコ)戦の前座で登場して又吉 康幸(沖縄ワールドリング)に2回TKO勝ちして華々しく日本リングでのデビュー戦を飾り、帝拳ジムとマッチメイク契約を交わした。
その後、2014年5月31日、地元メキシコシティで当時WBC世界Sフライ級王者だったシーサケット・ソールンビサイ(タイ)に世界初挑戦すると8回クアドラスの左目上の裂傷で試合続行不可能となり試合終了。それまでの採点による負傷判定の3ー0で勝って念願の王座獲得となった。
王座に就いて4度防衛したあとの昨年11月28日、宮城県仙台市のゼビオアリーナ仙台で江藤 光喜(白井・具志堅)の挑戦を受けて対戦すると3ー0の判定勝ちで5度目の防衛に成功。6度目の日本リング(6勝5KO)で負けなしとなった。
今年4月23日、地元シロアナ州ロスモチスでリッチー・メプラナム(比国)に8回終了のTKO勝ちで退け6度目の防衛に成功した。
そして、今回、最強挑戦者との7度目の防衛戦となる。
一方、ゴンサレスは15戦目で初来日して2007年11月3日に東京・後楽園ホールで2度の世界挑戦経験を持つエリベルト・ゲホン(比国)と対戦してわずか初回1分9秒の衝撃的KO勝ちで日本デビューを飾った。この勝利後に帝拳ジム所属選手となる。
2008年9月15日、横浜市・パシフィコ横浜で当時WBA世界ミニマム級王者だった新井田 豊(横浜光)に世界初挑戦するとゴンサレスの強打で新井田の右瞼が腫れあがり4回ドクターストップとなり、TKO勝ちで21戦目で日本での世界王座奪取となった。
2014年9月5日、東京・代々木第二体育館で当時WBC世界フライ級王者だった八重樫 東(大橋)と対戦して壮絶な打撃戦に打ち勝ち9回TKO勝ちで3階級制覇を達成した。
その後も来日して日本でのリングは通算9度目となり全勝している。
いまや、軽量級の押しも押されもせぬ最強王者となって世界中が注目するほどの選手にのし上がっている。
また、今回ゴンサレスはWBCフライ級王座を保持したまま臨むことを願っているものの、果たしてWBC団体が保持を許可するのかどうかが待たれるところ。
そして、世界が注目する井上 尚弥(大橋)との「夢の対決!」を見据えた戦いとなる。
〈みどころ予想〉
かねてからクアドラスのほうがゴンサレスとの対戦を熱望していたようだ。
当初は来年あたりに対戦するかと思われていたが、帝拳ジムの同門ということもあって、早目の実現となった。白熱した展開になること間違いなし。
体格ではクアドラスが上回っているが、ゴンサレスのパワーを考えるともはや体格差などは関係ないでしょう。
ハードパンチとテクニックのゴンサレス対コンビネーションブローのクアドラスとなる。
左右強打で圧力をかけて倒すのは似ているところはあるが、やっぱり一発一発のパワーはゴンサレスのほうが断然上です。
クアドラスが勝機を引き寄せるとすれば、ゴンサレスの強打を浴びない動きで持久戦に持ち込む他はないような気がします。
力の差から言えば、ずばり、ゴンサレスの後半戦でのKO勝ちとみます。
【両選手の戦績】
カルロス・クアドラス 36戦35勝(27KO)1分・無敗
ローマン・ゴンサレス 45戦45勝(38KO)無敗
《アントニオ・マルガリート復帰2戦目!》8月13日(日本時間14日)メキシコ/No.658
ー激闘王マルガリート復帰2戦目ー
《NABO北米コンチネンタルSW級TM》
開催日:8月13日(日本時間14日)
開催地/会場:メキシコ・バハカリフォルニア州ロサリート/セントロ・デ・コンベンシオーネ
当初はノンタイトル戦とされていたが、急遽、NABO(WBO傘下)北米コンチネンタル・Sウェルター級王座を懸け10回戦で行なわれることとなった。
元3団体世界ウェルター級王者
アントニオ・マルガリート(38=O/MEX)
VS.
WBO世界Sウェルター級11位・WBC12位
ラモン・アルバレス(30=O/MEX)
マルガリートの全盛期には激闘ファイターぶりを発揮してWBO世界ウェルター級王座を7度防衛するなどメキシコに留まらず米国や日本でも高い人気を誇っていた。
マルガリートのピークと言えば2008年7月26日に当時ウェルター級最強と呼ばれたミゲール・コット(プエルトリコ)との対戦で不利予想を覆しての11回TKO勝ちでコットに初黒星を与えたこの頃でしょう。この試合はボクシング史に刻むマルガリートの闘いだったと絶賛された。
その後はあのマニー・パッキャオ(比国)と戦っての大差判定負けやコットに10回TKO負けでリベンジされるなど連敗を喫した。
結局、重なる激戦が続いて右目を痛めたことや体力限界もあって、そのコット戦の2011年12月3日の試合を最後に引退した。
しかし、マルガリートはグローブを置いて4年経った今年1月13日に現役復帰を表明。
そして、3月5日に復帰戦をメキシコシティーにあるアレーナ・シウダ・デ・メヒコでホルへ・パエスJr.(メキシコ)と対戦して6回にダウンを奪われたものの、終盤巻き返しての10回判定勝ちを収めて4年3ヶ月振りのリングを勝利で飾っている。
今回、復帰2戦目となる相手は今を時めくスーパースターサウル・アルバレスの兄であるラモン・アルバレスとの対戦となった。
〈試合経過〉
初回、アルバレスが序盤からワンツー、接近して左フック、左右フック、左右ボディーと積極的に攻める展開で始まった。
マルガリートは左ジャブから接近して右フック、左ボディーもやや様子見。
2回、アルバレスが勢いそのまま左ジャブから接近して左フック、右フック、右フックとヒット。マルガリートも負けじと左ジャブからワンツーボディー、右ストレートと反撃開始。
3回からマルガリートが左ジャブを多用して接近すると左ボディー、右ボディーと攻め、離れると右ストレート、ワンツーボディー、ワンツーと圧力をかけ始めた。
アルバレスはワンツー、右ストレートもやや手数を減らす。
4回〜7回マルガリートが左ジャブを多用してワンツー、右ストレートと攻め接近するとボディー攻めで主導権を握った。アルバレスは7回に手数を増やしたが、4回〜6回まで手数を減らした。マルガリートは左目下をカット。
8回、マルガリートが中盤ワンツー、左ボディーでアルバレスをロープに詰め、更に右フック、左ジャブとヒットさせるとアルバレスが逃れようとしたところで足を絡ませ膝をつくダウン。カウントをとられたが、アルバレスにダメージはなく再開すると左フック、左右フックで反撃した。
アルバレスはインターバルでリングサイドに陣取る弟サウルからなにやらアドバイスを受けた。
9回〜10回とアルバレスが接近して左フック、左右フック、右アッパーの猛攻で盛り返す展開となった。マルガリートはスタミナを切らしたか、左ジャブで後退しながら凌ぐなかでゴングとなった。
〈採点結果〉
94ー95(アルバレス)
97ー92(マルガリート)
97ー92(マルガリート)
2ー1のスプリット判定ながらもマルガリートが勝利してNABO(WBO)北米コンチネンタル・Sウェルター級王座を獲得。これでWBO世界ランキング入りを確実なものにした。
アルバレスは後半戦に猛追したものの、中盤に手数を減らしてポイントを奪われたことが悔まれた。
※素人採点は96ー93でマルガリートでした。
〈後記〉
マルガリートは8回までの貯金で勝ったようなものだった。
後半戦のアルバレスの猛攻は12ラウンドで戦っていれば、間違いなく逆転していたはず。
もうマルガリートの左目まわりはパンチを浴びて腫れ上がり限界ぎりぎりだった。それだけ終盤はスタミナ切れが顕著で動きが緩慢になってデフェンスは隙だらけといえた。
おそらく、年齢からくるものでしょう。
マルガリートは今回勝利したものの、これから先の試合に不安を残した。
《連戦連敗でもリングに上がり続けたボクサー達!》特別編/No.659
連戦連敗でもリングに上がり続けたボクサー達!
負けても、負けてもリングに上がり続けるボクサー達がいた。
ここに紹介する4人のボクサー達は頂点(世界王者)を目指したはずだった。
しかし、彼等はなかなか連敗という暗く長いトンネルから抜け出せなかった。
ある日の英国でのこと、老舗新聞社の記者が試合終了後のある選手に:「あなたは何故、50連敗もしながらリングに上がり続けるのですか?」
選手:「何故って、俺にもベルトを巻く権利はあるんだ。君の質問は失礼だし愚かだ!」と憤慨した。(下の写真にいます)
そして、彼等は「噛ませ犬」と陰口を叩かれつつも勝利のためにリングに上がり続けた・・・
レジー・ストリックランド(米国)
ミドル級/Sミドル級
【戦績】
363戦66勝(14KO)276敗17分4無効試合
【獲得タイトル】
1998年1月6日、米国インディアナ州Sミドル級王座獲得(防衛0)
2000年11月21日、インディアナ州Sミドル級王座獲得(防衛0)
ストリックランドは1987年1月6日に4回戦デビューも判定負けでプロキャリアをスタートさせた。
1989年4月26日〜1990年9月12日まで21連敗を記録。
1998年にはなんと年間42試合も戦っている。月平均3.5試合もこなしたことになる。
たとえ4回戦、6回戦であっても日本では考えられない試合数です。
また、州王座ながらも王座に就いたことは立派。
2005年10月5日、6回戦で判定負けしての9連敗で引退した。
ピーター・バックリー(英国)
Sバンタム級
【戦績】
300戦32勝(8KO)256敗12分
【獲得タイトル】
1991年6月5日、英国(ミッドランズエリア)Sフェザー級王座決定戦で王座獲得。(防衛1度)
1995年2月10日、英国(ミッドランズエリア)Sバンタム級王座獲得。(防衛0)
バックリーは1989年10月4日、4回戦で引き分けプロデビュー。
10戦目までは6勝2敗2分とそこそこの戦績だった。
しかし、2003年10月29日〜2008年9月26日まで37連敗して1分けを挟んで再び47連敗(84敗1分)するなど2度に渡り記録的敗北を重ねてしまった。(1分けを挟んでいる為、記録上は84連敗ではない)
2008年10月31日、判定勝ちしたが、19年間の現役生活に終止符を打った。
その後、これを知った米国のハリウッド映画監督でプロデューサーのジョージ・ティルマンJr.の目に止まり伝記映画製作に乗り出すことが発表された。
ティルマン監督は1997年の米国テレビドラマ「ソウルフード」で注目され、ハリウッド映画では「ザ・ダイバー」ロバート・デニーロ主演の映画もヒットして注目された。人間ドラマからアクションまで幅広くこなすマルチ監督として知られる。有望選手の踏み台(噛ませ犬)にされた陽の当らなかった選手をどう撮るか、その出来映えが楽しみです。
それにしても、人生というプロセスには何が起こるか分からない。
2014年連敗記録で話題となった選手!
ロビン・デーキン(英国)
Sライト級
【戦績】
53戦2勝51敗
【獲得タイトルなし】
2006年10月28日、4回戦で判定勝ちデビュー。
しかし、2戦目の2007年2月17日〜2013年10月4日まで不名誉な50連敗を喫した為、体のダメージを心配した英国ボクシング協会はライセンスを剥奪。
それでもデーキンは諦めつかずリングに上がることを協会に訴え、健康診断で体の異常がない旨の診断書を提出したがライセンスは再発行されなかった。
デーキンはならばと他国ドイツのボクシング協会へライセンス発行を願い出て試合出場の許可を得ることとなった。
この稀に見る連敗で英国の老舗新聞社デイリーミラー紙も取り上げた。
そのインタビューでデーキンは「俺はタイトルが欲しいんだ。これから先、どうなるかは分からないが、俺はタイトル獲得に値する人間だと思っている。ドイツでの復帰が英国ボクシング協会の判断を変えて、俺のライセンスを戻してくれることを期待しているんだ。ライセンスが戻れば、俺はまた夢を追い続けることができる。ボクシングが俺のすべてなんだ。連敗記録は俺の本当の能力が反映されていない」と訴えて大反響となった。
そして、デーキンの生い立ちも紙上で紹介された。
彼は先天性内反足を持って生まれ、60回も手術を受けて6歳まで歩くことができず、それを克服していた。
12歳ころから体を鍛える為に、ボクシングを始めるとのめり込みアマチュアでは75戦40勝の戦績を残した。
その中には英国ユースボクシング選手権の準決勝まで進出したこともあった。
そんなことから、デーキンの諦めずリングへ上がり続ける姿に障がいを持った子供達のヒーローとなった。
話を元に戻すと結局、新聞での大反響もあって英国ボクシング協会はライセンスを再発行することとなった。
しかし、2014年3月1日、4回戦で判定負けして51連敗の不名誉記録を更新してしまう。
それでも、デーキンはまだ諦めなかった。
2015年8年25日、4回戦で判定勝ちして2勝目を挙げると、その後の試合記録はない。
彼こそが、誰よりも1勝の重みと喜びを感じたのかもしれない。
エリック・クランブル(米国)
ミドル級
【戦績】
32戦0勝31敗(31KO負け)1無効試合
クランブルは1990年6月22日に4回戦で2回KO負けの黒星デビューとなった。
1試合無効試合を挟んで2003年9月19日に初回TKO負けで1勝もすることなく引退となった。
無惨にも負けはすべてKOによる敗北でした。
そして、もの哀しくも記録だけは残された。
《WBO世界ミニマム級王座決定戦》8月20日兵庫県三田市/No.660
《WBO世界ミニマム級王座決定戦》
開催日:8月20日
開催地/会場:兵庫県三田市/三田市駒ヶ谷運動公園体育館
前王者の田中 恒成(畑中)がLフライ級へ転向する為、4月7日に返上した王座の決定戦となる。
WBO世界ミニマム級1位
加納 陸(18=S/TAISEI)
VS.
WBO世界同級2位
高山 勝成(33=O/NAKAZATO)
〈試合経過〉
初回、高山が開始早々右ストレートで切り出し接近して左フック、離れて右ストレートと先制した。
しかし、加納も左ストレート、接近して左右フック、右フックと攻めると離れて左ストレート、ワンツー、左カウンターと見映えが良かった。〜加納の有効打で10ー9。
2回、加納が左ストレート、右アッパー、左ストレートとヒット。高山も左右フック、右ストレート、右フックと攻めるとロープに詰め右フック、左ボディー、右ストレート。〜加納の有効打で10ー9。
3回、高山が右ストレート、左アッパーとヒット。加納は左ストレートを連発。しかし、1分11秒経ったところでレフェリーが高山のバッティングによる左瞼上カットでドクターチェック。再開すると、フックの激しい打ち合いとなった。〜高山が有効打で10ー9。
4回〜5回と高山がワンツー、接近してボディー、左右フックと上下に打ち分けるコンビネーションで主導権を握った。〜高山の有効打で10ー9。
6回、高山が右ストレート、右ストレート、左ボディーと攻めてクリンチとなったところで高山の左瞼出血の酷さをみかねたレフェリーが試合をストップしてドクターに委ねた。(開始から55秒)
結局、傷の深さに試合続行不可能と判断したドクターの指示で試合ストップとなり、負傷判定となった。〜途中までの採点は有効打で高山が10ー9。
〈採点結果〉
59ー56(高山)
58ー56(高山)
59ー55(高山)
3ー0の負傷判定勝ちで高山がWBO世界ミニマム級王座を獲得して4度目の王座返り咲きとなった。
加納は日本の最年少世界王座獲得記録を目指したが、王座獲得はならなかなった。
※因みに素人採点は58ー56で高山でした。
【両選手の戦績】
★加納 陸 13戦10勝(5KO)2敗1分
★高山勝成 40戦31勝(12KO)8敗1分
〈後記〉
キャッチコピーは「加納の勢いか、それとも高山の経験か!」だった。
そして、日本の最年少世界王座獲得を売りにしていた。
その年少記録は井岡 弘樹(グリーンツダ)の18才9ヶ月と10日だった。
加納は18才9ヶ月と4日。
まあ、こういう年齢による記録はスポーツ紙や専門誌が騒ぎ立てるだけで試合のあとに付いてくるもの。あんまり興味はない。
そういうことより、試合の内容(中身)でしょうね。
そして、高山の世界戦は2試合連続の負傷判定となった。
高山選手には酷かもしれないが、偶然のバッティングとは言え、ここ4試合の世界戦で3度が自らの負傷での途中終了。
これではお金を出してまで観に行く気にはならないでしょう。
初防衛戦は王者に相応しい戦いを期待したい。
(PHOTOS BY SANSPO.COM)
《IBF世界ウェルター級王座指名挑戦者決定戦》8月21日(日本時間22日)米国/No.661
《IBF世界ウェルター級王座挑戦者決定戦》
開催日:8月21日(日本時間22日)
開催地/会場:米国ニューヨーク州ブルックリン・コニーアイランド/フォード・アンフィシアター
IBF世界ウェルター級2位
エロール・スペンスJr.(26=S/USA)
VS.
IBF世界同級6位
レオナルド・ブンデュ(41=O/SLE/ITA)
両者はIBF世界ウェルター級王者ケル・ブルック(英国)への挑戦権を懸けて対戦する。
しかし、そのブルックは2階級上の3団体世界ミドル級最強王者のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との対戦が9月10日に控えている。
IBF団体はブルックのウェルター級王座を保持したままの対戦を許可するのだろうか。ちょっと先行き不透明な挑戦権試合だ。
何れにしても、挑戦権を懸けたこの試合は両者にとって大事な戦いとなる。
スペンスJr.はスター候補の呼び声高し!
スペンスJr.は米国期待のスター候補で売り出し中の選手。
アマチュア時代は2009年、ナショナル・ゴールデングローブス大会のウェルター級で優勝。
同年全米ボクシング選手権ウェルター級優勝。
2011年、全米ボクシング選手権ウェルター級優勝。
2012年、ロンドン五輪は他の米国代表が敗退するなか準々決勝まで進んで期待されたが、技巧派の銅メダリストとなったアンドレイ・ザムコボイ(ロシア)に敗れてベスト8どまりだった。
また、ボクシングでのメダル獲得常連国だった米国は初めてメダル0に終わったオリンピック年でもあった。
スペンスは五輪終了後にプロ転向を表明して同年11月9日に3回KO勝ちで華々しくプロデビュー戦を飾った。
ここ5試合は負け数の少ない期待度の高い選手が相手で元世界王者をKOするなど快進撃を続けて20戦全勝(17KO)の戦績で人気急上昇中。
サウスポーで左右フックと左ストレートに強打を秘めるボクサーファイター。
一方、対戦相手のブンデュは西アフリカのシエラレオネ出身でイタリアに移住している。
アマチュア時代は1996年、イタリアボクシング選手権でライト・ミドル級の準優勝を皮切りに国内外の国際大会で優勝、準優勝を重ねる。
2000年、シドニー五輪にイタリア代表でウェルター級に出場して、初戦でのちのWBA・IBF世界ミドル級王者となるダニエル・ゲール(豪州)に判定勝利で2回戦に進んだが、敗退した。
2004年までイタリア選手権でライト・ミドル級優勝やウェルター級で準優勝するなど活躍したあとプロ転向を表明。
2005年4月1日、6回戦で初回KO勝ちでプロデビュー。
アマチュア歴が長かった為、30歳での遅いプロスタートとなった。
その後は順調に白星を重ねて地域王座に君臨して世界ランクも急上昇。
2014年12月13日、米国デビュー戦。ネバダ州ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで当時のWBA世界ウェルター級暫定王者のキース・サーマン(米国)に念願の世界初挑戦となった。
しかし、試合は初回にダウンを奪われたのが響き、フルラウンドまで持ちこたえたが大差判定負けに終わった。唯一の敗戦はこの1敗のみ。
そして、再び世界挑戦へのチャンスを手繰り寄せる戦いとなる。
本来オーソドックスだが、相手によって左にスイッチする技巧派のボクサーファイター。
〈試合経過〉
初回、ブンデュ(赤いトランクス)が序盤からスペンスに合わせて左構えで左フック、左右フック、離れて左ストレートで激しく攻め立てる。しかし、スペンスも右ジャブを突いて左ストレートを連発して接近すると右アッパー、右フックとブンデュの圧力をはね返す。
2回、スペンスが左ストレート、右ジャブ、接近してボディー攻め。ブンデュは圧力に対応して体を左右に振りながら、右フック、ワンツー、右フックと互角の攻めを見せる。
3回、スペンスが左ストレート、右ジャブ、接近して右ボディー、左フックとプレッシャーを強めた攻め。ブンデュも接近して左右フック、離れてワンツー、右ボディー、ワンツーと引かない。
4回、スペンスが右ジャブを多用して接近すると左右フック、左ボディー、離れては左ストレート、ワンツーと猛攻。ブンデュも右フック、左右フックと対応するものの、徐々に手数が減った。
5回、ブンデュが右フックをヒットさせると左右スイッチを繰り返して右ストレート、左右ボディー、ワンツーと巻き返しにかかる。スペンスは右ジャブからワンツーを多用して接近すると右ボディーで対応もやや攻めあぐむ場面も。
6回、スペンスが左ストレートを連発した中盤でブンデュをロープに詰め左アッパーを突き上げるとブンデュは後向きにダウン。しかし、レフェリーはスペンスが押し倒したスリップとしてカウントは取らなかった。再開するとスペンスが再びワンツーでコーナーに追いやると左右フックから強烈な右フックを追加するとブンデュはロープ下に崩れ落ちる失神ダウン。レフェリーはブンデュのダメージをみると途中でカウントをやめKO宣言した。
ーKO・6回2分06秒ー
スペンスが王座への挑戦権を獲得してデビューから21連勝とした。
ブンデュはキャリア初のノックアウト負けを喫して挑戦権を逃した。
【両選手の戦績】
★エロール・スペンスJr. 21戦21勝(18KO)無敗
★レオナルド・ブンデュ 37戦33勝(12KO)2敗2分
(PHOTO BY BOXINGSCENE)
《田口vs.宮崎&河野vs.コンセプシオン》8月31日 東京都大田区/No.662
《WBAダブル世界タイトルマッチ》
開催日:8月31日
開催地/会場:東京都大田区/大田区総合体育館
《WBA世界Lフライ級タイトルマッチ》
WBA世界Lフライ級王者
田口 良一(29=O/WATANABE)
VS.
WBA世界同級1位
元WBA世界ミニマム級王者
宮崎 亮(28=O/IOKA)
ワタナベジムは毎回斬新はポスターを制作していますね。
しかし、今回はなにかゴチャゴチャしてるなと思いつつよーく見ると、4選手の試合への意気込みをコメントした文面がコピーされています。これはこれで今までになかった面白いポスターです。さあ〜、試合予想といきましょう。
田口は今回世界王者となって初めてメインを務める。
また、日本人選手との対戦は3年振りとなる。
今回の両者にはかなりの体格差があります。
田口が身長167.5cmでリーチが172cm。
宮崎が身長155cmでリーチが158cmとこの階級でも小柄。
田口が身長で12.5cm、リーチで14cmと体格差は歴然。
ただ、宮崎が出入りの激しい打ち合いをすることから体格差はあまり関係ないという人もいる。
しかし、田口が徹底した自分の距離で左ジャブを多用するなら十分リーチ差が武器になり、宮崎はむやみには踏み込めないでしょう。
これを宮崎がいかにタイミングを計って潜り込んで攻めるかにかかってくる。
あとは、スタミナの消耗戦になるでしょう。
宮崎はLフライ級に転向した試合(2013年暮れ)での悪夢の3回KO負けから再起して4試合連続KO中だ。
だが、負け越し相手やデビュー戦相手の勝って当たり前の格下との対戦でちょっと物足りない。
かたや、田口は王者となってから難敵相手に初防衛戦から激戦続きのタフな試合に打ち勝ち3試合連続のTKO勝利中。
これまで戦ってきた対戦相手を見る限りでは田口に分があるでしょう。
その戦い振りの礎となったのが、2013年8月の試合で今を時めく井上尚弥(大橋)との対戦だった。結果は判定負けしたものの、怯まず打ち合ったタフさに井上も攻めあぐんで焦った場面もあった。その屈しない戦い振りがいまだに生かされているのは確かなようだ。
今回、宮崎は久々の世界戦でもう後がない思いも強く、激戦必至は間違いないでしょう。
ただし、田口有利の大方予想は周りに聞くとほぼ一致する。
やはり激戦慣れしてそれなりに見えない部分で進化していると考えるからでしょう。
宮崎が3年振りの王座奪取で2階級制覇なるのか、それとも田口が4度目の防衛となるか。
序盤戦の速攻勝負なら宮崎にも勝機ありも、長引けばスタミナに不安あり。
中盤から後半戦まで持ち込むなら断然タフな田口にストップ勝ちもあり得るでしょうか・・・
【両選手の戦績&タイプ】
★田口良一 27戦24勝(11KO)2敗1分/右・ボクサーファイター
★宮崎亮 28戦24勝(15KO)1敗3分/右・ボクサーファイター
《WBA世界Sフライ級タイトルマッチ》
WBA世界Sフライ級王者
河野 公平(35=O/WATANABE)
VS.
WBA同級暫定王者/1位
元WBA世界フライ級王者
ルイス・コンセプシオン(30=O/PAN)
2012年12月31日、河野はWBA世界Sフライ級王者のテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)へ挑戦して4回KO勝ちで3度目の世界挑戦で悲願の王座獲得となった。
2013年5月6日の初防衛戦が王座統一戦となり暫定王者のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)と戦い2回にソリスからダウンを奪うと8回にダウンを奪い返され0ー2(4P・2P・ドロー)差の判定負けで統一に失敗して王座から陥落。短命王者でもうこれが限界かと囁かれた。
しかし、2014年3月26日、河野はWBA世界Sフライ級2位を維持していたことで再び王座決定戦のチャンスに恵まれ暫定王者だったデンカオセーン・カオウィチット(タイ)と対戦すると4回にダウンを奪い、8回再びダウンを奪ってカウントアウトでのKO勝ちで見事に王座返り咲きとなった。
2014年12月31日、5位ノルベルト・ヒメネス(ドミニカ)の挑戦を受けて戦い1ー1の引分けで辛くも初防衛に成功。
2015年9月、当時2位だった指名挑戦者の亀田興毅(亀田)と対戦決定したが、亀田がJBCライセンスを失効(更新停止状態)していた為、日本での試合が出来ず、2015年10月16日に米国イリノイ州シカゴのUICパビリオンでの対戦となった。
試合は河野が不利予想も2回に亀田からダウンを奪ってリードを保ち12回3ー0(6P・2P・8P)差の判定勝ちで2度目の防衛に成功。亀田は試合後に引退を発表した。
2016年4月27日、7位のインタノン・シットサイトーン(タイ)と対戦して3ー0(119ー106×3)の大差判定勝ちで3度目の防衛に成功した。
そして、今回4度目の防衛戦はこれまでの対戦相手で最強と言ってもいい倒し屋の暫定王者(1位)ルイス・コンセプシオン(パナマ)との戦いとなる。
この対戦で気になるのは、今年4月27日に絶対王者として君臨していたWBA世界Sフェザー級王者だった内山高志が2回TKO負けして劇的番狂わせを起した現WBA世界Sフェザー級王者ジェスレル・コラレス(パナマ)のセコンドを務めたファン・モスケラトレーナーが帯同してきたということで話題となっている。
そのモスケラ氏はインタビューで「コウノの欠点は把握済みだ。ルイスに負ける要素は何もない。万全の態勢で挑んでパナマへベルトを持ち帰る」と強気のコメントをした。
河野陣営にとっては気の抜けない厳しい戦いとなる。
コンセプシオンは身長157cm(リーチは不明)とこのクラスでは小柄。(河野は167cm)
戦い振りは突進して左右をブンブン振り回す好戦的ファイター。
これまでの試合をユーチューブで3試合見たが、とにかく大きい相手には体を左右に振って潜り込んで回転の速い左右フックで畳み掛ける戦い方だった。
また、その反面、顎の弱さもあって4敗のうち2敗はその顎を打ち抜かれてストップされている。
河野は突進してくるコンセプシオンをどう食い止め、攻めるかでしょう。
コンセプシオンはWBA世界フライ級王者時代に4度目の防衛戦でエルナン・マルケス(メキシコ)と対戦して11回TKO負けで王座から陥落。
再戦でもマルケスに初回TKO負けの返り討ちに遭って王座返り咲きに失敗。
その後、階級を上げて2015年4月4日、WBC世界Sフライ級王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)に挑戦したものの、0ー3(6P・6P・8P)差の判定負けで2階級制覇に失敗となった。
しかし、2015年9月19日、WBA世界Sフライ級暫定王者の強打者デビッド・サンチェス(メキシコ)に挑戦して10回TKO勝ちで暫定ながらも2階級制覇達成。
王者となった同年12月17日には宿敵マルケスとの3度目の対戦で打ち勝って3ー0(13P・13P・11P)差の大差判定勝ちで雪辱を果たした。(これが直近の試合)
そして、今回正規王座を奪い取るべく日本に乗り込んできた。
コンセプシオンはインタビューで「コウノについてはユーチューブで十分分析して研究してきた。これまで対戦したエルナン・マルケスやカルロス・クアドラスに比べればコウノは劣っている。帰国する時は、暫定の消えたベルトと一緒だ!」とトレーナー同様自信たっぷりのコメントをしている。
コンセプシオンの戦歴の中身を見るなら河野の不利予想は仕方ない。
序盤戦に河野がどう攻略するかで決まるような気がする。
コンセプシオンはおそらく、最初からガンガン攻めて速攻勝負を考えているかもしれない。
ここで、河野はコンセプシオンの突進してくる頭に注意すべきでしょう。
中盤までならコンセプシオンのKO勝ち。
後半戦まで持ち込むなら河野でしょうか・・・
【両選手の戦績&タイプ】
★河野公平 41戦32勝(13KO)8敗1分/右・ボクサーファイター
★ルイス・コンセプシオン 38戦34勝(24KO)4敗/右・ファイター
《田口がV4達成。河野は王座陥落!》8月31日 東京都大田区/No.663
《WBAダブル世界タイトルマッチ》
開催日:8月31日
開催地/会場:東京都大田区/大田区総合体育館
《WBA世界Lフライ級タイトルマッチ》
WBA世界Lフライ級王者
田口 良一(29=O/WATANABE)
VS.
WBA世界同級1位
元WBA世界ミニマム級王者
宮崎 亮(28=O/IOKA)
〈試合経過〉
初回、お互い左ジャブを出しての様子見で始まった。
体が解れると田口が接近して左右フック、左フック離れて右ストレートと上々の立ち上がり。宮崎も左ボディー、左ボディーと応戦。
2回〜3回田口が左ジャブを多用して接近すると左右フック、アッパー、ボディーと上下に打ち分け主導権を握った。宮崎もフック、アッパーで対応も浅いヒットで流れを掴めない。
4回〜7回も田口が左ジャブを軸に距離を保って右ストレート、フック、ボディー攻めとコントロールして優位に回を重ねる。宮崎も左フック、アッパー、ボディーと攻めるものの、決定打とまではいかない。
8回、宮崎が左ジャブから接近して左フック、右ボディー、左右ボディーと手数を増やしてようやく巻き返しにかかる。
9回〜10回も宮崎がワンツー、左ボディー、右アッパー、離れて右ストレートと攻めて流れを掴むかに見えたが、右目横をカット。
結局、宮崎の巻き返しはここまでだった。
11回〜12回と田口が再び左ジャブから接近して左右アッパー、左フック、離れて右ショートと打ち込み優位に進めるなかでゴングとなった。
★田口が完勝でV4達成!
〈採点結果〉
116ー112(田口)
117ー111(田口)
119ー109(田口)
田口が3ー0の大差判定勝ちで4度目の防衛に成功した。
宮崎は3年振りとなる世界戦も2階級制覇はならなかった。
※因みに素人採点は117ー111で田口でした。
【両選手の戦績】
★田口 良一 28戦25勝(11KO)2敗1分
★宮崎 亮 29戦24勝(15KO)2敗3分
(PHOTO SANSPO.COM)
〈後記〉
やっぱり、という展開となった。
田口の長いリーチの左ジャブ多用は小柄ながらも突進力のある宮崎には理にかなっていた。
これで宮崎は左を突かれるあまり、中盤あたりまでなかなか突破口が掴めなかった。それでも宮崎は8回〜10回に強引に接近してフック、ボディー、アッパーとその持ち味は少なからず見せた。
しかし、決定打とまでにはいかず、勢は途切れてしまった。
結局、田口の最後まで左ジャブを絶やさない攻めが上下に打ち分けるコンビネーションに繋げてポイントを重ねたと言えるでしょう。
田口の5度目の防衛戦に期待したい。
《WBA世界Sフライ級王座統一戦》
WBA世界Sフライ級王者
河野 公平(35=O/WATANABE)
VS.
WBA同級暫定王者・1位
元WBA世界フライ級王者
ルイス・コンセプシオン(30=O/PAN)
〈試合経過〉
初回、コンセプシオンがワンツー、接近して左ボディー、右ボディー、右アッパーと積極的に攻め込んでのスタートを切った。河野は右ボディー、左ボディーも様子見の立ち上がり。
2回、コンセプシオンが右ストレート、接近しての左フック、左ボディー、右ボディーと優位な攻め。河野はボディー攻めもコンセプシオンの強打を警戒してか手数少なし。
3回、河野がようやく圧力をかけて左ジャブから右ストレート、接近して左右ボディー攻め。コンセプシオンは右ストレート、ワンツー、右ストレートも手数減らす。
4回〜6回までコンセプシオンが右ストレートを連発して接近するとボディー、アッパー、フック、離れてワンツーと出入りの激しい攻めで優位に回を重ねる。
7回、河野が左ジャブから接近してボディー、フック、離れて右ストレートを連発も左目尻カット。コンセプシオンも負けじと右ストレート、右ボディーと攻めて右ストレートを連発。
これ以降は河野が右ストレート、フック、ボディー攻め。コンセプシオンはワンツー、右ストレート、フックで交互にポイントを取ったり取られたりの展開となった。
11回、お互い引かない激しい打ち合いのなかでコンセプシオンが左瞼上をカットして流血。
最終回、早々コンセプシオンのローブローで河野に休憩が与えられた。再開するとコンセプシオンがワンツー、左右フック、左アッパーと攻め、ボディー打ちから離れて右ストレートを連発してラストを優位に攻めた。ポイントで劣る河野は一発逆転KOを狙って右フック、左フック、右ストレートと攻めたがダメージを与えるまでにはいかず、かえって攻め込まれる中でゴングとなった。
★コンセプシオンが正規王者に!
〈採点結果〉
115ー113(コンセプシオン)
116ー112(コンセプシオン)
116ー112(コンセプシオン)
3ー0でコンセプシオンが王座統一に成功(記録上は暫定王座2度目の防衛)して正規王座に就いた。また、暫定から正規と明確な2階級制覇も達成した。
河野は4度目の防衛に失敗して王座から陥落となった。
※因みに素人採点は116ー112のコンセプシオンでした。
【両選手の戦績】
★河野 公平 42戦32勝(13KO)9敗1分
★ルイス・コンセプシオン 39戦35勝(24KO)4敗
(PHOTO SANSPO.COM)
〈後記〉
河野はコンセプシオンの強打を警戒するあまり序盤から攻めあぐみ、中盤(4回〜6回)まで引きずってしまった。後にこの部分がポイントに響いた。
ようやく7回に本来の攻めを見せて流れを掴むかと思われたが、8回にコンセプシオンの右ショートやフックを浴びてリードを許してしまう。
結局、河野は後半戦に盛り返しかけたものの、挽回出来ないまま終わってしまった。
河野選手はこれで引退なのか、それとも、2度目の王座返り咲きを目指すのかその去就が気になるところ。
コンセプシオンは公言通りの暫定を消しての嬉しい帰国となる。
正規王座の初防衛戦に注目したい。
《IBF世界Sフライ級タイトルマッチ》9月3日 比国/No.664
《IBF世界Sフライ級タイトルマッチ》
開催日:9月3日
開催地/会場:比国マニラ・タギッグ市/フィリピン海軍基地体育館
この試合はフィリピンの英雄マニー・パッキャオが興したMPプロモーションズによるプローモートで開催された。
IBF世界Sフライ級王者
マクジョー・アローヨ(30=S/PUR)
VS.
IBF世界同級3位
ジェルウィン・アンカハス(24=S/PHI)
サウスポー同士対決!
〈試合経過〉
序盤からアンカハスが右ジャブ、左右フックと積極的に攻める。アローヨも左ストレート、左右フックと引かない展開で始まった。
2回以降、手数、有効打でややアンカハスが上回る流れが中盤まで続いた。
8回、アンカハスが左ボディーストレートを突くとアローヨはロープ背にもたれかかって腰を落として腰掛け状態となったが、レフェリーはダウンとは認めず、会場内からブーイングが乱れ飛んだ。(この回終了後にダウンと訂正)
9回、再びアンカハスが左右ボディーを叩き込むとアローヨは膝をつくダウン。しかし、レフェリーはアンカハスが押さえつけたとしてスリップ判定とみなした。ここでも会場内はブーイングとなった。
10回〜11回とスタミナを切らして手数の減ったアンカハスにアローヨが左ストレートを連発して挽回を狙うものの、アンカハスに左右で躱されダメージを奪うまでにはいかず攻め切れない。
最終回はお互い引かない左右の打ち合いのなかでゴングとなった。
アンカハス世界初挑戦で王座奪取!
〈採点結果〉
118ー109(アンカハス)
117ー110(アンカハス)
115ー112(アンカハス)
3ー0でアンカハスが判定勝ちして世界初挑戦で見事に王座獲得となった。
アローヨは初防衛に失敗するとともにキャリア初黒星を喫し王座から陥落した。
【両選手の戦績】
★マクジョー・アローヨ 18戦17勝(8KO)1敗
★ジェルウィン・アンカハス 27戦25勝(16KO)1敗1分
〈後記〉
プエルトリカンのアローヨは双子の兄弟で兄のマクウィリアムス(フライ級世界挑戦2度経験者)とともに米国デビューを果たして人気がでてきた選手。
しかし、今回弟は兄より先に王座を手にしたものの、初防衛できずにベルトを手放してしまった。
兄のマクウィリアムスは強打が売りの戦い振りなら、マクジョーはテクニックを駆使した戦い方をする選手。
今回は敵地で雰囲気に呑まれたのかディフェンスに隙が出てアンカハスのボディー強打を浴びての敗北だった。
ダウンは喫したが、KO負けからは逃れた。
初黒星のマクジョーはまた復活するでしょう。
一方、新王者となったアンカハスの記事よりもパッキャオのプローモートで早くも世界王者を誕生させた手腕振りがメディアを賑わせているようです。
若いアンカハスは地元で有利な上に憧れであるパッキャオのアドバイスなどで今まで以上のパワーを発揮したのはいうまでもない。
これから先、更に打撃を磨いて観客を沸かせる試合を重ねればパッキャオの手腕で米国デビューも考えられるでしょう。
また、日本人選手との対戦も期待したいところ。
(右側が新王者アンカハス)
《WBO世界Sフライ級タイトルマッチ》9月4日 神奈川県座間市/No.665
《WBO世界Sフライ級タイトルマッチ》
《53.0Kg契約10回戦》
〜メダリスト清水聡デビュー戦〜
《58.0Kg契約6回戦》
開催日:9月4日
開催地/会場:神奈川県座間市/スカイアリーナ座間
《WBO世界Sフライ級タイトルマッチ》
WBO世界Sフライ級王者
井上 尚弥(23=O/OHASHI)
VS.
WBO世界同級1位
ペッチバンボーン・Ggym(31=O/THA)
ビッグマッチへ一歩前進!
〈試合経過〉
初回、井上が左ジャブを突いて接近するとボディー攻め、離れて右ストレートヒットと上々のスタートを切った。ペッチバンボーンも右フック、右ストレート、左右ボディーと応戦。
2回〜3回、井上は右ストレートを連発すると接近して右アッパー、右ボディー、左フックと手数を増やして優位に立った。ペッチバンボーンも手数は少ないものの、左右ボディー、離れ際に右フック、右ストレートの反撃。
4回、井上が突然左にスイッチして左ストレート、終盤右に戻して右ストレートをヒット。
5回〜6回、井上がボディー打ちから離れるとワンツー、右ストレートと出入りを激しくする。ペッチバンボーンも負けじと手数を増やしてボディー、右アッパー、左右フックと反撃。
ここまで井上が主導権を握っているものの、時折ペッチバンボーンのフックを浴びて手こずる場面も見られた。
8回、井上が左ジャブを多用して接近すると左右フック、右アッパーと圧力をかけた。しかし、ペッチバンボーンもボディー攻めからロープに詰めて右フックの好打でしぶとい粘りを見せる。
そのままフルラウンドまで回を重ねるかと思われたが・・・
〜迎えた10回、序盤ペッチバンボーンが挽回すべく接近して左右ボディー、右フック、右フックと攻めると井上が右フック、ワンツー、右アッパー、離れてワンツー、右ストレートとそれまでにない怒涛の攻めで圧力をかけてはね返す。終了間際にワンツー連打から右フックダブルでペッチバンボーンはたまらずダウン。
ダメージのあるなかなんとか立ち上がったものの、カウントアウトとなった。
ーKO・10回3分03秒ー
井上はポイントで圧倒リードしていたが、マットに沈めての3度目の防衛に成功した。
ペッチバンボーンはしぶとさを見せたが力尽きて王座には届かなかった。
【両選手の戦績】
★井上 尚弥 11戦11勝(9KO)無敗
★ペッチバンボーン・ゴーキャットジム 47戦38勝(18KO)8敗1分
〈後記〉
ペッチバンボーンが井上に右フックを浴びせた場面では、トップコンテンダーに相応しい手ごわい相手と思えた。
そして、井上が4回早々左にスイッチしたのには理由があったようだ。
2回に手数を増やして右を出した時に拳を痛めて動きで誤魔化そうとした場面で今度は以前から痛めていた腰痛が悪化したという。なるほどというほかない。
しかし、軽量級最強のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と戦うことになれば、そんなことは言ってられない。
もし、実現してゴンサレスに倒された場合は言い訳にしかならないのだ。
そんなことにならないように完治させてからリングに上がるべきでしょう。
ただ、次戦は8月31日に前WBA世界Sフライ級王者の河野公平(ワタナベ)からタイトルを奪ったルイス・コンセプシオン(パナマ)との統一戦を視野に交渉するとのこと。
そして、その後にゴンサレスとの「夢の対決」となるようです。
《53.0Kg契約10回戦》
WBC世界Sフライ級4位/WBA7位
前OPBF東洋太平洋Sフライ級王者
井上 拓真(20=O/OHASHI)
VS.
WBC世界フライ級15位
フロイラン・サルダール(27=O/PHI)
拓真逆転勝利で世界戦へ一歩前進!
〈試合経過〉
初回、開始早々拓真は右ストレートをヒットさせ順調にスタートを切ったかに見えたが、サルダールの右ストレートを浴びて尻もちダウン。
しかし、ダメージなく再開して動きで凌いだ。サルダールは早くも左目尻カット。
2回〜4回までサルダールが右ストレート、ワンツー、接近してボディー打ちと試合をやや優位に進める。
5回〜7回と拓真も接近してボディー、左アッパー、左右フック、離れて右ストレートと手数を増やして徐々に巻き返していく。
ポイントで追いついた拓真は8回に右ストレートでサルダールがしゃがみ込むダウンを奪い、9回にも左フックで2度目のダウンを奪うと完全に形勢逆転。
最終回はお互い引かない左右の出し合いも決め手のないままでゴングを聞いた。
〈採点結果〉
97ー90×2者(拓真)
96ー91(拓真)
拓真が逆転による3ー0判定で勝利を収めた。
サルダールは世界ランカーに相応しいスタートを切ったが、逆転負けとなった。
【両選手の戦績】
★井上 拓真 8戦8勝(2KO)無敗
★フロイラン・サルダール 26戦23勝(14KO)2敗1分
《58.0Kg契約6回戦》
ロンドン五輪バンタム級銅メダリスト
清水 聡(30=S/OHASHI)
VS.
韓国フェザー級王者
李 寅圭(イ・インギュ/24=O/KOR)
清水圧倒KO勝ちデビュー!
〈試合経過〉
初回、清水は右ジャブを出して様子見の展開だったが終盤左ストレートで李からダウンを奪う好スタートを切った。
2回にも清水は右フックで李から2度目のダウンを奪って一気に畳み掛けるかと思われたが、慌てず左ストレートで冷静な攻めを見せる。李も時折右ストレート、左右フックと繰り出すが空転気味。
3回〜4回も清水が右ジャブから右フックなど一方的に攻めて李はもうフラフラの状態だった。
迎えた5回、清水は左ストレート、左右ボディーと攻めて更に左ボディーを叩くと李がうずくまったところでレフェリーがダメージを見てKO宣言した。
ーKO・5回2分13秒ー
清水は序盤から圧倒してのKOデビューを飾った。
韓国王者の李はなにも出来ずじまいで敗れ去った。
【両選手の戦績】
★清水 聡 1戦1勝(1KO)
★李 寅圭 6戦3勝(1KO)3敗
(PHOTO SANSPO.COM)
《ニュージーランドの若きヘビー級の逸材!ジョセフ・パーカー》特別編/No.666
★ヘビー級の逸材ジョセフ・パーカー!
最近、強打者ぶりを発揮して頭角を現してきたニュージーランドの期待される若きヘビー級ボクサージョセフ・パーカーを紹介しましょう。
現在、ヘビー級のアジア、オセアニア地域ではナンバーワンとの評価で逸材と呼ばれている選手。
まあ、ヘビー級と言えば、アジア地域では体格的に目指す選手が少なく中国人選手が数人米国のリングに上がっているものの、世界戦までには到達していないのが現状。日本人選手も数人いるが皆無に近い。
しかし、島国からなるオセアニア地域では大柄な選手も多く特にオーストラリアとニュージーランドが競い合っている格好。
その他にもオセアニア諸国の島国であるフィジー共和国、トンガ王国、バヌアツ共和国、サモア独立国などの出身者で若い大柄な選手がオーストラリアやニュージーランドに移住してリングに上がっている。
その精悍で体格の良さは特にフィジーやサモアのラグビー選手を見れば一目瞭然でしょう。
今年3月5日にはチェチェン共和国のグロズヌイでWBA世界ヘビー級王者のルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)にオーストラリアのルーカス・ブラウンが世界初挑戦で10回逆転によるTKO勝ちの番狂わせでオーストラリア初(オセアニア、アジアを含む)の世界ヘビー級王座をもたらし、快挙として大騒ぎとなった。しかし、その喜びも束の間でした。
試合を終えた1週間後にブラウンの禁止薬物使用が発覚して王座は剥奪となり、ぬか喜びに終わってしまい、盛り上がりも萎(しぼ)んでしまった。
果たして、パーカーがその後を引き継いでニュージーランドに正真正銘の世界ヘビー級王座をもたらすのか注目が集まっています・・・
〈ジョセフ・パーカー〉
〈ジョセフ・パーカーMEMO〉
本名:ジョセフ・デニス・パーカー (joseph dennis parker)
生年月日:1992年1月9日生まれ。ちょっと老けて見えますが、まだ24歳です(笑)
出身地:ニュージーランド・オークランド出身(両親はサモアの家系)
プロ転向後は米国ネバダ州ラスベガスに在住も現在の主戦場は母国ニュージーランド。
階級:ヘビー級
身長/リーチ:193cm/193cm
スタンス:右・ボクサーファイター
〈主なアマチュア戦歴〉
ジョセフ・パーカーは11歳でボクシングに興味を持ちジム通いすることになる。16歳になったパーカーはニュージーランドのアマチュア地域大会に出場し始めた。
2010年・世界ユースボクシング選手権アゼルバイジャン大会(バクー)にSヘビー級で出場して銅メダル獲得。
2010年・コモンウェールスゲームズ(英連邦加盟諸国大会)インド(ニューデリー)にSヘビー級で出場してベスト8。
2011年・世界ボクシング選手権アゼルバイジャン大会(バクー)にSヘビー級で出場して2回戦敗退。
2012年・オリンピック・オセアニア地域予選・豪州大会(キャンベラ)にSヘビー級で出場したが初戦敗退。これでオリンピック出場はならず、けっして輝かしい戦歴は残せなかったが、アマチュアボクシングに終止符を打ってプロ転向を表明した。(アマチュア戦績は不明)
〈プロ戦歴〉
2012年7月5日、地元オークランド・スカイシティー・コンベンションセンターでディーン・ガーモンズウェイ(ニュージーランド)と6回戦で対戦して僅か初回1分49秒のTKO勝ちで華々しいデビュー戦を飾った。
2013年5月16日、5戦目で米国カリフォルニア州アーバインにあるハイアット・リージェンシー・ホテルでブライス・リタニコーエ(米国)と6回戦で対戦して3ー0(60ー54×3)のフルマーク判定で勝利して米国デビュー戦を飾る。
その後もドイツ遠征と2度目の米国登場でともにTKO勝ちを収め国内試合も含めて連戦連勝を飾り14戦全勝(12KO)無敗とした。
2015年8月1日、地元インバカーギルのスタジアム・サウスランドで日本ヘビー級王者の藤本京太郎(角海老宝石)と対戦予定だったが、藤本陣営の都合により試合は中止となって消滅した。
2015年10月15日、地元オークランドのトラストアリーナで世界戦経験者で一時はオセアニア・アジア地域でナンバー1と呼ばれたカリー・ミーハン(NZL/豪州)を僅か3回TKOで下して一気に知名度を上げた。
2016年5月21日、ニュージーランド・マヌカウシティーのボーダーフォン・イベントセンターでIBF世界ヘビー級王座挑戦者決定戦をIBF世界ヘビー級3位で元WBCヘビー級シルバー王者の強打者カルロス・タカム(カメルーン)と対戦して12回3ー0(4P・4P・2P)差で判定勝ちを収めてIBF世界ヘビー級王者のアンソニー・ジョシュア(英国)への挑戦権を獲得するとともにオセアニア・アジア地域ナンバー1の評価を得た。
2016年7月21日、ニュージーランド・クリストチャーチのホーンキャッスル・アリーナで藤本京太郎に5回TKO勝ちを収めているKO率75%を誇る元OPBF東洋太平洋(WBC傘下)&PABA(WBA傘下)ヘビー級王者でWBA世界ヘビー級11位のソロモン・ハウモノ(豪州/NZL)と対戦して4回1分35秒のTKO勝ちを収めた。
2016年9月の現在まで、20戦全勝(17KO)無敗の戦績を積み上げている。
〈地域獲得タイトル〉
パーカーは母国ニュージーランド・ヘビー級王座を皮切りに地域王座を総なめにしている、いわゆる地域タイトルコレクター。
2014年・WBA(PABA)ヘビー級王座(防衛7)
2014年・WBOオリエンタル・ヘビー級王座(防衛9)
2015年・WBOアフリカ・ヘビー級王座(防衛2)
2015年・WBC(OPBF)東洋太平洋・ヘビー級王座(防衛2)
2015年・WBCユーラシア・パシフィック・ヘビー級王座(防衛0)
2015年・WBAオセアニア・ヘビー級王座(防衛0)
〈8月現在の世界ランキング〉
WBA-8位/WBC-4位/WBO-1位/IBF-1位
パーカーの身長193cm(リーチ同じ)はもはや2m超えが続出するヘビー級のなかでは大柄ではなくなった。
戦い振りは一撃強打で倒す場合もあるものの、どちらかと言えば接近して上下に打ち分けるコンビネーションで追い込み左右連打で畳み掛けるタイプ。
接近してのフック、アッパーが強烈で持ち味です。
ここ5戦は世界戦経験者でオセアニア・アジア地域ナンバー1やIBF世界3位を退けるなどそのパワーは証明された。
そして、世界戦に向けての前哨戦という位置づけの試合が組まれた。
保持するWBOオリエンタル・ヘビー級タイトルを懸けての闘いになる。
《WBOオリエンタル・ヘビー級Tマッチ》
開催日:10月1日
開催地/会場:ニュージーランド・オークランド・マヌカウシティ/ボーダーフォン・イベントセンター
対戦相手はベテランのアレクサンダー・ディミトレンコ(34=ロシア/ドイツ)。
ディミトレンコはロシア出身でドイツを主戦場にしている選手。
身長が201cmでリーチが211cmもある。
2012年5月5日、当時売り出し中だったクブラト・プーレフ(ブルガリア)と対戦してプーレフのボディー攻めでスタミナ切れを起こし11回KO負けを喫して世界挑戦を逃してしまった。しかし、その後は6連勝(3KO)と復活してきた。
かつては、WBOインターコンチネンタル・ヘビー級王座の8度防衛やEBUヨーロッパ・ヘビー級王座を2度防衛してヨーロッパでは敵なしの強さで4団体全てにランキングされていた。
34歳となった今、プーレフ戦の敗北からディフェンス重視のスタイルに変えたことで以前ほど豪快さはなくなったものの、ワンツー、右ストレートの破壊力はいまだに健在だ。
その重いパンチをまともに浴びれば10才若いパーカーでさえも倒されてしまう危険性はある。
ディミトレンコは現在ノーランカーながらも、最も危険な相手であることは間違いないでしょう。
パーカーはディミトレンコとの18cmのリーチ差をどう躱して攻略するかが鍵になりそうです。
もう世界戦も目前で絶対落とせない一戦となる。
さあ、ニュージーランドのジョセフ・パーカーに注目です。
【両選手の戦績】
★ジョセフ・パーカー 20戦20勝(17KO)無敗
★アレクサンダー・ディミトレンコ 40戦38勝(24KO)2敗
《IBF世界S・ライト級タイトルマッチ》9月9日(日本時間10日)ロシア/No.667
《IBF世界S・ライト級タイトルマッチ》
開催日:9月9日(日本時間10日)
開催地/会場:ロシア・モスクワ/クリリア・ソベトフ球技場
IBF世界Sライト級王者
エドゥアルド・トロヤノフスキー(36=RUS)
VS.
IBF世界同級3位
小原 佳太(29=MISAKO/JPN)
〈試合経過〉
初回、お互いジャブを突き合うなか小原が右ストレートで先制すると終盤右フックでトロヤノフスキーを仰け反らす場面をみせ上々のスタートを切った。トロヤノフスキーも中盤からワンツー、右ストレート、右フックと応戦。
2回、トロヤノフスキーが開始早々右ストレートで攻め右フックを浴びせて小原をグラつかせるとロープに詰めた。間髪置かずに左右フックから右アッパーを突き上げると小原は二本目ロープ下から後ろ向きにはみ出し、そのままリング下へ落下。
極めて稀で危険な光景だった。(落ちた時点で中断もダウン裁定)
小原は後頭部から落下しながらも意地でリングに戻って再開したが、再びトロヤノフスキーが左フックから左右連打を浴びせて小原が防戦一方となったところでダメージを見たレフェリーは試合をストップさせた。
小原はトロヤノフスキーの速攻戦法に嵌ってしまい王座奪取はならなかった。
ーTKO・2回1分35秒ー
王者トロヤノフスキーが2度目の防衛に成功。
小原は世界初挑戦での王座獲得に失敗となった。
(とんでもなく危ない光景)
【両選手の戦績】
★エドゥアルド・トロヤノフスキー 25戦25勝(22KO)無敗
★小原 佳太 19戦16勝(15KO)2敗1分
〈後記〉
小原は2回にトロヤノフスキーの右フックを貰ってから流れが変わってしまった。
戦前トロヤノフスキーは王者となったものの、それ以前の試合は知名度のある強打者とは戦っていないことで、大したことはないと小原陣営は踏んでいたようだ。
しかし、いざ戦ってみるとその強打者ぶりは本物だったということになる。
まあ、このSライト級もミドル級と同じように層が厚い。
ちょっとした動きや打撃ミスで形勢が変ってしまうのもこの階級のおもしろさでしょう。
この試合を繰り返し観たが、小原がロープを背にした場面でロープの緩さが気になった。
明らかに他の試合のロープの張りと比べると違いを感じた。
IBF団体はもっとリングの作りにも目を配り注意を促すべきでしょう。
ちょっと間違えばリング禍に繋がりかねない。
それにしても、小原選手に怪我がなかったことは幸いだった。
小原選手の復活に期待したい。
※この試合模様はBSフジで9月13日(火曜日)深夜に放送されます。
AM0:00〜0:55まで。
《注目の世界戦4試合&亀海VS.ソト・カラスⅡ》(日本時間10,11日)米国・英国/No.668
《WBC・IBF世界ミドル級Tマッチ》
開催日:9月10日(日本時間11日)
開催地/会場:英国ロンドン/グリニッジO2・アリーナ
2階級上げてゴロフキンに挑むブルックにWBA団体はミドル級で戦ったことがない為、世界戦として承認しなかった。
仮にブルックが勝利した場合、WBAスーパー王座は空位になるとした。
従って、2団体での世界戦で行われることとなった。
WBAスーパー・WBC・IBF世界ミドル級王者
ゲンナディ・ゴロフキン(34=O/KAZ)
VS.
IBF世界ウェルター級王者
ケル・ブルック(30=O/GBR)
〈試合経過〉
初回、序盤はお互い左ジャブの出し合いもゴロフキンが右ストレートをヒットさせ接近して左ボディから左フックでブルックを仰け反らせる好調なスタートを切った。ブルックも終盤負けじと右フックを浴びせてワンツー、右ストレートと攻めた。
2回、ブルックが左フックを連発して終盤左アッパーを突き上げゴロフキンを慌てさせると会場は大歓声があがった。
3回、ゴロフキンが左ジャブから接近すると左右ボディから左フック、離れて右ストレートとプレッシャーを強める。ブルックは途中スリップして再開すると右ストレート、接近して右アッパー、左フックと反撃した。
4回、ゴロフキンが左ジャブから接近してボディに集中攻撃すると離れ際に左フック、右ストレートと攻めた。ブルックは左フック、右フックと応戦して終盤左フックをヒットさせる。ブルックはこの回終了後に右頬の腫れで右目の見辛さを気にした。
迎えた5回、ゴロフキンが左フック、右ストレートと攻めたあとの中盤ワンツーでブルックをロープに追い詰め右ボディ、左右フック連打したところでブルックのセコンドがリング袖からタオルを振り回したが、レフェリーは気づかず投げ入れてようやく気づき試合を止めた。
しかし、ブルックはストップに不満の表情だった。
セコンド陣は右頬の腫れで右目の視界を心配しての判断だったようだ。
ーTKO・5回1分52秒ー
ゴロフキンがWBC5度、IBF2度の防衛に成功するとともに17連続KO防衛タイ記録となった。
ブルックは2階級上げて挑んだが王座獲得ならず初黒星を喫した。
【両選手の戦績】
★ゲンナディ・ゴロフキン 36戦36勝(33KO)無敗
★ケル・ブルック 37戦36勝(25KO)1敗
〈後記〉
ブルックのセコンドからのタオル投入は正解でした。
試合終了後にブルックの右目眼窩骨折が判明したようで手術が必要とのこと。
ブルックは2回こそ自慢の強打でゴロフキンを脅かしたが、急ごしらえの体重増ではパワーが持続できなかった。
2、3試合ミドル級で戦って体に馴染ませていれば、もっと違う形になっていたかもしれない。
ゴロフキンにしてみれば、下から上げてきた選手に易々と負けるわけにはいかなかったでしょう。
4回までゴロフキンがポイントでリードしていたとは言え、ブルックのアッパー、フックをまともに貰っていたのを久々目にした。
試合終了後にゴロフキンはインタビューで「彼がミドル級でやっていくには厳しいと思う。パンチは貰ったが僕には効かなかった」と強がりのコメントを残した。
しかし、百戦錬磨でもミドル級では少しのミスで状況が変ってしまうおそれもあることを垣間見た気がした。
次のゴロフキンの対戦相手が誰になるのか楽しみです。
《WBC世界Sフライ級Tマッチ》
《Sウェルター級NT10回戦》
開催日:9月10日(日本時間11日)
開催地/会場:米国カリフォルニア州イングルウッド/ザ・フォーラム
《WBC世界Sフライ級Tマッチ》
WBC世界Sフライ級王者
カルロス・クアドラス(28=O/MEX)
VS.
WBC世界フライ級王者・3階級制覇者
ローマン・ゴンサレス(29=O/NCA)
この対戦を熱望したのはクアドラスのほうだった。
クアドラスが日本の帝拳ジムとマッチメイク契約しているなら、ゴンサレスは所属選手ということから同門対決の格好となった。
初回、両者が対峙すると明らかに体格でクアドラスが上回っているのが分かる。
ゴンサレスが体を左右に振って前進しながらジャブでけん制して右フック、左ボディと攻め離れて右ストレート。クアドラスは軽快なフットワークで接近すると左右ボディ、左アッパー、離れてワンツーと繰り出す。
お互い違うスタイルでのスタートを切った。
2回、ゴンサレスが右ストレートをヒットさせ接近すると左右フック、ボディ、アッパーとプレッシャーをかける。クアドラスも左右ボディ、右ストレート、左右フックと応戦。
3回、クアドラスがフットワークを増やして右ストレート、接近して左フック、左アッパーとゴンサレスの攻撃に負けない攻めをみせる。
4回〜8回とお互いポイントを取ったり取られたりの一進一退が続いた。
9回〜10回とゴンサレスのフック、ワンツーの攻めが冴えたが右頬の腫れが目立ち始める。
この間クアドラスも右目横をカット。
後半戦の11回〜12回とクアドラスがフットワークを使って右ストレート、接近して左右フック、アッパーとやや見映えのいい攻めをみせてゴングを聞いた。
そして、終わった瞬間、お互い引かない激闘に大歓声が響き渡る。
拮抗した試合内容に採点縺れも予想された。
両者はお互い両手を挙げて勝利アピールして結果を待った。
〈採点結果〉
117ー111(ゴンサレス)
116ー112(ゴンサレス)
115ー113(ゴンサレス)
3ー0の判定勝ちでゴンサレスがニカラグア初の4階級制覇を達成した。
クアドラスは7度目の防衛に失敗して王座から陥落となった。
※素人採点は115ー113でゴンサレスでした。
【両選手の戦績】
★カルロス・クアドラス 37戦35勝(27KO)1敗1分
★ローマン・ゴンサレス 46戦46勝(38KO)無敗
〈後記〉
ゴンサレスの両頬の腫れをみると、いかに激戦だったかが分かる。
ゴンサレスがそれだけパンチを被弾したことになり、初めてみた姿だった。
そして、まるで敗者のようだった。
終了ゴングが鳴って、これは採点泣かせと思われる試合でした。
実際、3人のジャッジがどんな採点をするのか・・・
①有効なクリーンヒット
②アグレッシブさ(有効な攻勢)
③リングジェネラルシップ(主導権支配)
④ディフェンス(防御)
ジャッジはこの4項目によって採点します。
結果は6P・4P・2P差でゴンサレスとなりました。
ジャッジ1人は6P差もつけていましたが、こんな差はなかったような試合内容とみました。
ポイントをつける際に、ジョー小泉氏がWOWOWで言っていたようにジャッジは選手のネームバリューが頭にチラつきどうしてもゴンサレスの強打ばかりが頭に浮かび採点に繁栄されがちになるようです。
しかし、はっきり言って、今回の試合は微妙でクアドラスに勝ちをつけるジャッジがいてもおかしくない内容でした。
そのクアドラスは採点に不満があったのか、インタビューに応えることなくリングの場から去ってしまいました。相当悔しかったのでしょう。
因みに、米国のボクシング専門サイトBOXINGSCENE(下のスコアカード)では引分けとしていました。
まあ、できればクアドラスは再戦決着を望んでいるんでしょう。
果たして再戦はあるのか・・・
この試合はクアドラスVS.ゴンサレス戦の前座で行われた。
今年4月15日、カリフォルニア州ロサンゼルス・ベラスコシアターで引き分けに終わった試合の再戦となる。
《Sウェルター級ノンタイトル10回戦》
ーREMATCHー
元NABF北米ウェルター級王者
へスス・ソト・カラス(33=O/MEX)
VS.
元OPBF東洋太平洋ウェルター級王者
亀海 喜寛(33=O/TEIKEN/JPN)
初回から亀海が右ストレート、左ボディとソト・カラスを攻めて終盤左ボディを効かせる。
真っ向勝負にでた亀海は2回〜5回と接近してフック、ボディと攻めまくった。
6回にソト・カラスも右ストレートから接近してボディ、フックとやや巻き返したが、ここまでが精一杯だった。
迎えた8回、亀海が接近して右アッパー、右フックと執拗に攻めまくり中盤に右ストレートでロープに追いやり左右フックを打ち込むとソト・カラスはたまらずひざまずくダウン。ソト・カラスはなんとか立ち上がって再開すると亀海の左右に晒されながらも執拗なクリンチで逃れた。
しかし、インターバルでダメージによる棄権を申し出て試合終了となった。
ーTKO・8回終了ー
亀海は世界戦経験者で知名度高いソト・カラスを倒したことで高い評価を受けて世界ランキング入りすることは間違いないでしょう。
へスス・ソト・カラスと言えば、現WBA世界ウェルター級王者のキース・サーマン(米国)、元2団体ウェルター級王者マルコス・マイダナ(アルゼンチン)、元2階級制覇王者デボン・アレキサンダー(米国)と錚々たる顔ぶれと戦い負けはしたが、激闘を演じています。
更に、元2団体世界ウェルター級王者だったアンドレ・ベルト(米国)には12回TKO勝ちを収めていました。
そんな相手に戦意喪失させた亀海は米国ボクシング界もほっとかないでしょう。
これからが楽しみです。
【両選手の戦績】
★へスス・ソト・カラス 44戦28勝(18KO)11敗4分1NC
★亀海 喜寛 32戦27勝(24KO)3敗2分
《WBA世界ミドル級タイトルマッチ》
《IBF世界ライト級王座決定戦》
開催日:9月9日(日本時間10日)
開催地/会場:米国ペンシルベニア州レディング/サタンデール・アリーナ
《WBA世界ミドル級タイトルマッチ》
WBA世界ミドル級正規王者
ダニエル・ジェイコブス(29=O/USA)
VS.
WBA世界同級15位
元WBC世界Sウェルター級王者
セルジオ・モーラ(35=O/USA)
ーTKO・7回2分08秒ー
1年振りの再戦はジェイコブスが4回と5回に1度ずつダウンを奪い、7回にも3度のダウンを奪っての完勝で4度目の防衛に成功した。
モーラは再戦も2階級制覇に失敗となった。
【両選手の戦績】
★ダニエル・ジェイコブス 33戦32勝(29KO)1敗
★セルジオ・モーラ 35戦28勝(9KO)5敗2分
ランセス・バルテレミー(キューバ)の王座返上によるIBF世界ライト級王座決定戦はジェイコブスVS.モーラ戦の前座で行われた。
《IBF世界ライト級王座決定戦》
IBF世界ライト級3位
リチャード・カミー(29=O/GHA)
VS.
IBF世界同級4位
ロバート・イースターJr.(25=O/USA)
無敗対決による王座決定戦はイースターJr.が接戦を制しての判定勝ちで18戦目で王座獲得に成功した。
〈採点結果〉
115ー112(イースターJr)
114ー113(イースターJr)
113ー114(カミー)
2ー1のスプリット判定ながらも、イースターJr.が新王者。
カミーは王座獲得失敗に終わった。
【両選手の戦績】
★リチャード・カミー 25戦24勝(22KO)1敗
★ロバート・イースターJr. 18戦18勝(14KO)無敗
《ゴング間近!山中VS.モレノ&ルイスVS.長谷川》9月16日 大阪/No.669
《WBC世界バンタム級タイトルマッチ》
《WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ》
開催日:9月16日
開催地/会場:大阪府大阪市浪速区/エディオンアリーナ大阪
《WBC世界バンタム級タイトルマッチ》
~REMATCH~
WBC世界バンタム級王者
山中 慎介(33=S/TEIKEN/JPN)
VS.
WBC世界同級1位
元WBA世界バンタム級スーパー王者
アンセルモ・モレノ(31=S/PAN)
アンセルモ・モレノが1年振りに再びやってきた!
前試合のVTR!
前回の戦いでは前半は右ジャブの突き合いで始まり、中盤から出入りの激しい打ち合いとなった。
それでも、お互いこれといった決定打に欠けて回を重ねる。
しかし、9回モレノが左ストレートから追撃して右フックで山中をグラつかせる見せ場を作った。
そして、今度は山中が10回にお返しとばかり左ストレートでモレノをグラつかせる。
結局、終盤の攻防も一進一退の展開となって終了した。
個人的にはややモレノが上回っていたように感じたが、スプリットデシジョンによる2ー1(115ー113×2/113ー115)の判定勝ちで山中が9度目の防衛に成功したのでした。
決着戦はどっちに軍配なるか!
お互い満を持して決着戦に臨む。
モレノはインタビューで「前回の戦いでヤマナカのパンチはあまりパワーを感じなかった。彼の戦い方や欠点もしっかり把握できている。今回、秘策はあまり言えないが、絶対、前とは違う戦い方になる。そして、結果的に僕が国にベルトを持って帰る」と自信満々に語った。
確かにモレノにとっては今回王座奪取を逃すとそう簡単にチャンスは巡ってこないことを自覚してのコメントだった。
一方、山中は前試合で元WBA世界Sフライ級王者のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)と戦い2回に右フックでダウンを奪ってさい先いいスタートを切ったかに見えたが、3回にソリスの右ストレートで2度ダウンを奪われ、あわやストップのピンチに見舞われた。
それでも、山中は4回から回復して本来の攻めを取り戻すと終盤戦にスタミナ切れしたソリスに左ストレートを浴びせて終了。
結果的に3ー0(117ー107×3)の大差判定勝ちで10度目の防衛に成功となった。
しかし、周りからは山中のピーク(全盛期)は過ぎたと囁きを耳にした。
確かに、モレノ戦とソリス戦の危なっかしい試合を観た限りでは仕方ないのかもしれない。
もう、山中の左ストレートは研究し尽くされ繰り出し部分をどう変化させるかでしょう。
それに、左一辺倒では限界にきたと言ってもいい。
むしろ、ソリスを倒した右フックをどう磨けたかにかかる。
来月34歳を迎える山中にとって今までにない秘策はあるのか、まだ進化の余地はあるのか・・・
モレノのいう「前とは違う戦い方」とはハンドスピードを徹底的に磨いたというのか、それとも徹底したアウトボクシングで戦うということなのか?
どっちにしても気迫で必死に食らいついてくるのは間違いない。
一発で倒すパワーはないものの、前回以上の手数ならモレノに勝機あり。
一方、山中は見透かされた左ストレートがだめなら徹底したフック攻めでしょうか?
先ずはボディー攻めで弱らせフックが機能すれば山中に勝機ありです。
何れにしても、五分五分で予想は難しいです。
【両選手の戦績】
★山中 慎介 27戦25勝(17KO)2分・無敗
★アンセルモ・モレノ 41戦36勝(12KO)4敗1分
《WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ》
WBC世界Sバンタム級王者
ウーゴ・ルイス(29=O/MEX)
VS.
WBC世界同級5位・元2階級制覇王者
長谷川 穂積(35=S/SHINSEI/JPN)
ウーゴ・ルイスは2012年12年4日、WBA世界バンタム級暫定王者時代に正規王者だった亀田 興毅(亀田)との統一戦で対戦(1ー2判定負け)して以来の3年9ヶ月振りの来日となる。
ルイスは亀田との敗戦後に4戦全勝(3KO)としてSバンタム級に転向して2015年8月29日、WBC世界Sバンタム級暫定王座決定戦でKO率87%を誇るフリオ・セハ(メキシコ)と対戦して3回にダウンを奪ったものの、5回ダウンを奪い返されての逆転TKO負けで王座獲得に失敗。
しかし、今年2月27日、正規王者となったセハとの再戦で初回開始早々右フックでダウンを奪い、立ち上がったセハに左右フック連打を浴びせて僅か初回51秒のTKO勝ちでリベンジして王座奪取となり、2階級制覇を達成。
今回が初防衛戦となる。
長谷川選手の3階級制覇なるか!
長谷川は2014年4月23日、当時IBF世界Sバンタム級王者のキコ・マルチネス(スペイン)に挑戦したが、絶頂期だったマルチネスに7回TKO負けで3階級制覇に失敗。
その後、Sバンタム級とSフェザー級の世界ランカーを下して2連勝するとSバンタム級の世界ランキング上位にランクイン。
今回、2度目となる3階級制覇のラストチャンスに挑む。
KO率82%を誇る左右フックが得意のルイスが的確に打ち込めれば間違いなく防衛でしょう。
ルイスの強打を躱してコンビネーション攻撃できれば長谷川にも勝機ありも、長引けば厳しい。
【両選手の戦績】
★ウーゴ・ルイス 39戦36勝(32KO)3敗
★長谷川穂積 40戦35勝(15KO)5敗
※テレビ放送は日テレさんで2回にわけての中継です。
山中選手の試合がPM7:56〜PM8:54まで。
長谷川選手の試合は深夜AM2:20〜AM3:20まで。
《WBCダブル世界タイトルマッチ》9月16日 大阪/No.670
ーWBCダブルタイトルマッチー
《WBC世界バンタム級タイトルマッチ》
《WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ》
開催日:9月16日
開催地/会場:大阪府大阪市浪速区/エディオンアリーナ大阪
《WBC世界バンタム級タイトルマッチ》
〜REMATCH〜
WBC世界バンタム級王者
山中 慎介(33=S/TEIKEN/JPN)
VS.
WBC世界同級1位・元WBA世界バンタム級スーパー王者
アンセルモ・モレノ(31=S/PAN)
初回、ゴングが打ち鳴らされるとモレノが鋭い右ジャブで先制した。
山中も右ジャブで応戦して左ストレート、接近して右フックと浴びせるとモレノも右フック、左フック、離れて左ストレート、ワンツーと激しい打ち合いとなった。
終盤、山中の左フックが命中してモレノが早くもダウン。モレノはダメージなく立ち上がって再開すると左ストレートで反撃した。
2回も山中が右ジャブから接近して左フック、左右フックと攻め離れて左ストレートを連発。
3回、モレノも左右フック、右アッパー、離れて左ストレート、ワンツーと巻き返す。
4回、モレノが左ストレートから接近して右ボディー、左右フックと攻めて右フックで山中からお返しのダウンを奪う。
しかし、山中にさほどダメージはなく立ち上がるとワンツーで凌いだ。
5回、ベルト奪取に燃えるモレノは左ボディー、左ストレート、右フックで山中を仰け反らしてダウン寸前に追い込んだ。
ここまでダウン応酬の展開で一進一退となった。
6回、山中が右ジャブから左ストレート、接近して左フックと放つと後退したモレノにカウンター気味の左ストレートを浴びせるとモレノは2度目のダウン。立ち上がったモレノは執念で左ストレート、右フックと反撃した。
迎えた7回、倒して決着をつけたい山中は右ジャブから左ストレートで圧力をかけると左右フックでモレノから3度目のダウンを奪う。これでもモレノは諦めず必死に立ち上がった。
しかし、山中の左カウンターが炸裂してコーナー下へ4度目のダウンをしたところでレフェリーは試合を止めた。
山中はこれ以上ない形で決着してみせた。
ーTKO・7回1分09秒ー
山中が再戦を返り討ちのストップ勝ちで11度目の防衛に成功した。
モレノは初のKO負けで王座返り咲きはならなかった。
【両選手の戦績】
★山中慎介 28戦26勝(18KO)2分・無敗
★アンセルモ・モレノ 42戦36勝(25KO)5敗1分
《WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ》
WBC世界Sバンタム級王者
ウーゴ・ルイス(29=O/MEX)
VS.
WBC世界同級4位・元2階級制覇王者
長谷川 穂積(35=S/SHINSEI/JPN)
ーTKO・9回終了ー
長谷川が5年5ヶ月振りに王座返り咲きに成功。
ルイスは初防衛に失敗となった。
〜詳しくは明日。
《スミスVS.アルバレス&グロワッキVS.ウシク》9月17日米国・ポーランド/No.671
《WBO世界Sウェルター級タイトルマッチ》
開催日9月17日(日本時間18日)
開催地/会場:米国テキサス州アーリントン/AT&T・スタジアム
開催される会場(上記写真)をよーく見るとまるで宇宙船みたいです。
この会場はアメリカンフットボール(NFL)屈指の名門チームであるダラス・カウボーイズの本拠地でもあります。その他、バスケットボール(NBA)でも使用されています。
何しろ、通常8万人収容も最大(立見席増設時)には11万1,000人も収容可能という途轍もない巨大なスタジアム。
今回、ボクシング開催では5万人枠で設定されたものの、アルバレス人気も相まって急遽、予定より多い5万1,400人分のチケットを販売したと発表されました。
普段の試合でも2〜3万人の集客力のある本人もさすがにその大きさには度肝を抜かされたに違いありません。
そして、下の写真は下見に訪れた際のアルバレス選手です。
挑戦を引き受けた王者スミスは英国で「4兄弟ボクシング一家」として有名で兄達を追い抜き真っ先に王座に辿り着いた三男坊です。日本にも「ナントカ3兄弟」というのがいましたね。
長男のポウル・スミスもSミドル級で2度の世界戦経験があり、ボクシング人気に沸く英国でも兄弟揃って人気があるようです。
挑戦するアルバレスも8人兄弟の内の4人はボクサーで長男は元WBA世界Sウェルター級王者。
今回、アルバレスとの対戦を誰もが拒む中でよくぞ引き受けたものでした。
そして、スミスの3度目の防衛戦はキャリア初の海外試合です。
WBO世界Sウェルター級王者
リアム・スミス(28=O/GBR)
VS.
WBO世界同級1位
前WBC世界ミドル級王者・2階級制覇王者
サウル“カネロ”アルバレス(26=O/MEX)
5万人以上もの大観衆のなかついにゴングは打ち鳴らされた。
〈試合経過〉
初回、アルバレスが左ジャブを突きながらワンツー、接近して右アッパー、左アッパーと突き上げる。スミスも左ジャブを突いて接近するとガードを固めて左右フックで応戦。
2回、ガードの固いスミスを強引に接近して左右ボディー、左右フックと攻めるアルバレスも終盤スミスに右フック、右フックと打ち込まれる。
3回〜4回、どうしてもスミスのガードを崩したいアルバレスは左ジャブを突きながら接近して右ボディー、右アッパーと攻めるが崩せない。スミスはワンツー、接近して右アッパー、左右フックと反撃する。
5回、スミスがアルバレスをロープにつめて右ボディー、左右フックと巻き返す攻めをみせてポイントを取った。しかし、スミスは右眉横をカットして流血。
6回、スミスが接近して左フック、右アッパー、左右フックと攻めて流れを掴むかに見えたが、アルバレスに左フック、右アッパー、右ボディーと攻められ流れを掴めず、逆にアルバレスのペースとなった。
7回、アルバレスがスミスのガードを左右フック、右アッパーで崩すと1分過ぎ右フック、左ボディー、右フックでスミスは腰を落とすダウン。しかし、スミスにあまりダメージはなく立ち上がると右フック、左フック、ワンツーで反撃する。
8回、スミスは巻き返しを狙ってワンツー、接近して右アッパー、右フックと攻めたが、終盤アルバレスの右アッパー、左ボディーと叩かれ、たまらずしゃがみ込む2度目のダウン。ここはゴングに救われた。
迎えた9回、賭けに出たスミスが右ストレートから左右フックでアルバレスをロープに詰めた2分過ぎ、アルバレスはロープを背に左フック、左ボディーで体を躱して左フックから左ボディーフックを叩き込むとスミスは崩れ落ちるように苦悶のダウン。レフェリーは苦痛にもがくスミスを確認すると即座に試合を止めた。
ーKO・9回2分28秒ー
アルバレスのこの階級は3年前にフロイド・メイウェザーJr.(米国)との統一戦で敗北して以来の王座獲得となった。
スミスは初の海外試合で初黒星を喫して3度目の防衛に失敗。王座から陥落となった。
【両選手の戦績】
★リアム・スミス 25戦23勝(13KO)1敗1分
★サウル・アルバレス 50戦48勝(34KO)1敗1分
〈後記〉
スミスは序盤から中盤まではガードしながらフックやアッパーをヒットさせなかなか善戦していました。しかし、ボディーを徹底的に攻められ徐々にそのガードもこじ開けられてしまいます。
まあ、アルバレスのボディー打ちはそれだけ相当重く強烈だったということでしょう。
そして、アルバレスは26歳の若さで区切りとなる50戦目をKO勝ちで飾り、王座獲得。
それにしても、スミスの粘りもあってボクシングの醍醐味が詰まった素晴らしい試合でした。
やっぱり、なんと言ってもファンの望みはゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との「夢の対決」でしょうが、Sウェルター級に下げたことでちょっと直ぐにという訳にはいかなくなったようです。
一時は歩み寄ったアルバレスとゴロフキンでしたが、実現するのか否かは成り行きを見守るしかありません。
それよりも、アルバレスの初防衛戦の相手が気になるところです。
《WBO世界クルーザー級タイトルマッチ》
開催日:9月17日(日本時間18日)
開催地/会場:ポーランド・グダニスク/エルゴ・アリーナ
WBO世界クルーザー級王者
クジストフ・グロワッキ(30=S/POL)
VS.
WBO世界同級1位
オレクサンドル・ウシク(29=S/UKR)
グロワッキは指名挑戦者のウシクとのサウスポー同士無敗対決となった。
〈試合経過〉
序盤はグロワッキが体を左右に振って右ジャブでフェイントしながら左ストレートで攻めるまずまずのスタート。ウシクも負けじと左右にサークリングしながら右ジャブから左右フックで応戦。
3回、出入りの激しい打ち合いでウシクの頭が激突してグロワッキが右眉カット。
これ以降もウシクの手数、有効打が上回って回を重ねていく。
グロワッキはウシクの左ストレートを警戒するあまり踏み込めず。
8回もウシクが左右フックの集中攻撃で試合を優位に進めた。
11回、ウシクがフットワークを使って右ジャブからワンツーとポイントを重ねる。
12回、早々にポイントで劣るグロワッキが左、右フックと攻めるとウシクがダウン。しかし、押し倒したとしてスリップ裁定となった。再開するとお互い左右の打ち合いも決定打に欠いたままでゴングとなった。
〈採点結果〉
117ー111×2者(ウシク)
119ー109(ウシク)
ウシクが3ー0判定勝ちで世界初挑戦ながらも王座を獲得するとともに無敗を守った。
グロワッキは初黒星を喫して2度目の防衛に失敗。王座から陥落となった。
【両選手の戦績】
★クジストフ・グロワッキ 27戦26勝(16KO)1敗
★オレクサンドル・ウシク 10戦10勝(9KO)無敗
〈後記〉
王者グロワッキはウシクの強打を警戒するあまり流れを掴めずズルズルといってしまった感じでした。
しかし、グロワッキはあの絶対王者だったマルコ・フック(ドイツ)に逆転KO勝ちして王座を手にしたタフな選手。
まだ黒星一つでまたいずれか這い上がってくるでしょう。
一方、ウシクはロンドン五輪のヘビー級金メダリスト。
その実力と才能を認めた元2団体ヘビー級の名王者ビタリ・クリチコ(ウクライナ)にスカウトされた。
そして、鳴り物入りでクリチコ兄弟が運営するK2プロモーションズ入りするとあれよあれよと言う間の10戦目での王座獲得となった。
これから先が非常に楽しみな選手です。
《いよいよゴング!クローラVS.リナレス》24日(日本時間25日)No.672
《WBA・WBC世界ライト級Tマッチ》
開催日:9月24日(日本時間25日)
開催地/会場:英国マンチェスター/マンチェスター・アリーナ
WBA世界ライト級王者
アンソニー・クローラ(29=O/GBR)
VS.
WBC世界ライト級(休養王者)
ホルヘ・リナレス(31=O/VEN/TEIKEN)
この試合は残念ながら王座統一戦ではない。
リナレスが今年2月の練習中に右拳を骨折して長期離脱を余儀なくされたため、WBC団体は休養王者扱いとした。
したがって、リナレスはWBC世界ライト級(休養王者)の肩書で対戦することになる。
そして、勝者が6月に王座決定戦でモンテネグロ初の世界王者となったWBC世界ライト級正規王者のデヤン・ズラチカニンといずれは戦うことになるでしょう。
〈アンソニー・クローラ〉
クローラは2012年までライバルだった同国のデリー・マシューズ(後のWBA世界ライト級暫定王者)やゲイリー・サイクス(後の英国Sフェザー級王者)などに負けて並の選手に埋もれていた。
しかし、2013年6月29日、元WBA世界Sライト級王者だったゲビン・リース(英国)に2ー0判定勝ちを収めてから世界ランカーに連勝するなどして世界ランキング入り。そして、世界挑戦へのチャンスを手に入れた。
2015年7月18日、今回と同じ会場で当時WBA世界ライト級王者だったダーリー・ペレス(コロンビア)に世界初挑戦したが、1ー1(116ー111/113ー114/113ー113)の引分け判定に泣き王座獲得はならなかった。
しかし、判定に疑問をもったクローラ陣営はWBAに不服申し立てして再戦が承認された。
2015年11月21日、マンチェスター・アリーナでペレスとのダイレクト・リマッチとして行われ、試合は序盤から前回と同じような展開となったが、クローラが5回強烈な左ボディーショットでKO勝ちを収めて2度目の世界挑戦で念願の王座獲得となった。
今年5月7日、マンチェスター・アリーナで初防衛戦を暫定王者でKO率86%を誇る強打者のイスマエル・バロッソ(ベネズエラ)を迎え対戦。4回まで劣勢を強いられたが、5回から巻き返して7回右ボディー打ちでダウンを奪いそのままテンカウントを聞かせての逆転KO勝ちで初防衛に成功。
今回が2度目の防衛戦となる。
クローラはけっしてパワーやテクニックに長けた選手ではなく、諦めず粘り強い攻め方で這い上がってきた選手。
得意はボディー打ちで試合を組み立てていく。
〈ホルヘ・リナレス〉
リナレスはアマチュア時代にベネズエラ・ジュニア・ボクシング選手権で5度優勝(階級は不明)するなど活躍して17歳で来日すると帝拳ジムへ入門。
2002年12月15日、大阪府立体育会館(エディオンアリーナ)でチョン・キョンスー(韓国)と6回戦で対戦すると、わずか初回45秒のKO勝ちで華々しいデビューを飾った。
ここから連戦連勝を重ねていく。
2007年7月21日、米国ネバダ州ラスベガス・マンダレイ・ベイセンターでWBC世界フェザー級王座決定戦をオスカー・ラリオス(メキシコ)と対戦。10回TKO勝ちを収めて念願の王座獲得となった。
しかし、初防衛に成功すると減量苦で王座を返上。
2008年11月28日、パナマ・パナマシティーでWBA世界Sフェザー級王座決定戦をワイベル・ガルシア(パナマ)と対戦すると5回TKO勝ちで2階級制覇を達成。
初防衛に成功すると、ここまで27戦全勝(18KO)無敗として日本でも人気が沸騰して第二の故郷での試合が望まれた。
2009年10月10日、凱旋試合を東京・国立代々木第二体育館で2度目の防衛戦をファン・カルロス・サルガド(メキシコ)と対戦するとゴング早々にサルガドの左右連打でいきなりダウン。辛くも立ち上がったリナレスだったが、再び左右を浴びて2度目のダウンでレフェリーストップ。
わずか、初回1分13秒のまさかの呆気ない幕切れで王座から陥落。28戦目での初黒星となった。
ここから、リナレスは苦難の道が続くことになる。
途中から階級をライト級に上げ元2階級制覇王者のヘスス・チャベス(メキシコ)に勝利するなどライト級の世界ランキング入り。
2011年10月15日、米国カリフォルニア州のステイプルズ・センターでWBC世界ライト級王座決定戦をアントニオ・デマルコ(メキシコ)と戦い11回TKO負けに終わり3階級制覇ならず。
2012年3月31日、メキシコ・カンクンでWBC世界ライト級挑戦者決定戦をセルヒオ・トンプソン(メキシコ)と対戦すると、わずか2回TKO負けに終わり、2連敗を喫して王座戦線から遠のいてしまう。
もう、リナレスのピークは過ぎてしまったと囁かれるなど試練に立たされた。
そして、ようやく這い上がるチャンスが訪れた。
2014年3月8日、米国ネバダ州ラスベガス・MGMグランド・ガーデンでWBC世界ライト級挑戦者決定戦を荒川仁人(八王子中屋)と戦い3ー0の大差判定勝ちで挑戦権を獲得。
2014年12月30日、東京都渋谷区の東京体育館でWBC世界ライト級王座決定戦でハビエル・プリエト(メキシコ)と戦い4回KO勝ちを収めて悲願の3階級制覇を達成。実に5年2ヶ月ぶりの王座復活となった。
2015年5月30日、英国ロンドンのO2アリーナでハードパンチャーの人気選手ケビン・ミッチェル(英国)と対戦して5回にダウンを奪われピンチに立ったが、10回左右でダウンを奪い返しての逆転TKO勝ちで初防衛に成功するとともに英国デビューを飾った。
2015年10月10日、5年半振りとなる母国ベネズエラ・カラカスでの凱旋試合をイバン・カノ(メキシコ)と戦い3回にダウンを奪い、4回にも左ボディーでダウンを奪うとレフェリーストップとなりTKO勝ちで2度目の防衛に成功した。
そして、今年2月指名戦(当時1位デヤン・ズラチカニン)に備えた練習中に右拳を骨折して指名戦は延期となり、11ヶ月ぶりのリングが2度目の英国での試合となる。
〈予想〉
クローラの戦い振りをみた感じではリナレスには怖さは感じないだろう。
もし、クローラに勝機があるとすれば、ボディー攻めから左右フックでしょう。そして、持ち前の粘り強い攻め方。
あくまでもリナレス有利とみているが、不安がないとも言い切れない。
何故なら、今までの戦いをみると強打に頼るあまりミスブローもかなりあってそこを突かれて逆転されたこともあったからだ。
もし、リナレスがクローラのボディーを貰い続けるとすれば、スタミナ切れで隙を作ってクローラの持ち味である圧力が生きてくるということ。
まあ、それさえ気をつけ的確に左右強打を浴びせられれば8回あたりにリナレスのKO勝ちとみますが・・・
【両選手の戦績】
★アンソニー・クローラ 38戦31勝(13KO)4敗3分
★ホルヘ・リナレス 43戦40勝(27KO)3敗